「よーう和泉ィ」
「あー、マサちゃん久し振りー」
「見たぜー大学祭」
「あっホント? どうだったー?」
今日は久々に高校の同級生と遊ぶ約束を。音楽系の専門に行って、今はバンドやりつつ生活してる長谷川正道。名前は男っぽいんだけど見た目は線が細いし顔も中性的だし髪は長いし、女の子でも通じるね。
そのマサちゃんがどうやら星大の大学祭に来ていたらしく、俺の顔を見るなりその話が始まった。ちなみに、俺とマサちゃんが仲良くしていたのは当然音楽繋がり。
「昼間やってたのは大学祭っつー感じで、まああんなモンだろなっつー感じ?」
「そりゃ大学祭だからね、あんなモンでしょ」
「悪いとは言ってねえからな。大学祭っぽい雰囲気で場の空気には合ってたし」
「そう? それならよかったけどー」
大学のサークルや何かで結成したバンドがそのまま大成するという話もちょいちょい聞くけど、ウチの軽音じゃ夢のまた夢だね。メンバーが他に外で組んでるバンドがあれば話は別だけど。
マサちゃんはスティックシュガーを3本入れた甘ったるいコーヒーをグビグビと飲みつつ、軽音の方のバンドの感想を並べ立ててくれる。まだそれ一本で生計が立ってないとは言え一応プロ。話は面白い。
「そんで和泉、夜やってた方」
「あー、ブルースプリングー?」
「あれは面白かったな! スーツ集団だからカッコから入ってんのかと思ったら」
「カッコからも入ってるけどね」
どうやらマサちゃんは中夜祭のブルースプリングも見てくれていたらしく、何でスーツなんだと衣装を笑うところから始まった。てかウケすぎでしょ。衣装がスーツのロックバンドもごまんといるのに。
「少なくともお利口さんじゃねえな、あのバンド」
「そうだね」
「でも何つーか、お前顔にめっちゃ出るからわかるんだけど、夜のバンドの方がイキイキしてたよな」
「あ、やっぱ分かっちゃった? さすがマサちゃんだなー」
「オメーが分かりやすすぎんだろーが」
いつもニコニコしていると言われるけど、俺の場合、機嫌の善し悪しを表すそれぞれのニコニコがある。分かる人には分かるみたい。マサちゃんとか芹ちゃんとか。
実際、学祭でやってたバンドなら軽音よりブルースプリングの方が楽しかった。軽音は軽音で楽しかったけど、やることがいつも同じだし、マンネリと言うかなあなあになってた感はあるから。
「学祭限定バンドだってのが惜しすぎると思うくらいには楽しかったよね!」
「えっあれ学祭限定か!」
「そうなんだよねー、もっといろいろやりたかったんだけどねー」
「いやそれもったいねーよ、粘れ、粘れ和泉!」
「俺も粘りたい!」
「そんでデモ音源作れ!」
「作れるものなら作りたい!」
芹ちゃんはほっといてもそのうちまた「バンドやりてー」ってうずうずし出す可能性があるからいいにしても、問題はリン君。元々芹ちゃんに脅されてやってくれてただけだし、説得は難しそうだなあ。
だけど、意外に面白いことが好きそうな面が垣間見えたから、これはきっちりと作戦を立てればイケるかもしれないね。リン君が腰を上げてくれそうな目的と言えば……芹ちゃんへの復讐か。それでいこう。
「わかった、時間はかかるかもしれないけどいつかまた絶対ブルースプリング名義でやるよ俺」
「そうか! 楽しみにしてるぜ和泉!」
「うん、楽しみにしててー」
「ところで和泉、お前今度のライブチケット買ってくれたりは」
「またー?」
end.
++++
芹ちゃんへの復讐www 春山さんドッキリはこのようにして始まるのか…!
というワケで青山さんと長谷川さん。何気に高校の同級生である。23歳。青山さん1ダブだから。春山さんと長谷川さんにケンカしてほしいねw
と言うかリン様の動きそうな動機が芹ちゃんへの復讐www まあ、確かにそれが一番早そうだけど、青山さんはどのようにしてリン様を攻めるのか!