「どうぞ、面白い部屋でもないですけど上がってください」

 暗幕が引かれた部屋は薄暗く、ところどころに飾られた小さなオブジェがライトアップされている。理美容院の前でくるくると回るトリコロールカラーのアレを彷彿するのは遺伝子構造の模型。
 壁のように聳える本棚は一人暮らしのそれにしては規模があまりに大きく、その中身も百科事典や図鑑など、1冊1冊が漬け物石か凶器になりそうな分厚さがある。

「しかしまあ、何という……」
「これはこれで、面白いには面白いですけどね。ある意味テーマがあって」
「あ、今お茶淹れますね。どこでも好きなところに座ってください」