学生の本分である勉学。部活が終わってそれにも目をやれるようになる。ゼミ室で一緒になった先輩は卒業論文を書くのに忙しそうにしていて、来年の今頃は俺もこうなるのかなって。
書いている途中の論文を読んでみてくれないかと一旦プリントアウトしたそれを受け取り、目を通す。気になったことは論文の内容でも、誤字脱字でも。何でも指摘していいとのことで右手には赤ペン。
「はー、読破!」
「洋平、どうだった」
「裕貴さん、これ論文での主張は一貫してる体ですよね」
「ああ」
「2章と3章が矛盾してるんですよね。4章以降でそれを結びつけて落とすつもりだったらスミマセン。あと誤字脱字に関しては途中赤で書いてます」
メグちゃんの前の放送部監査だった裕貴さんとは、ゼミでの関わりがある。部活では鬼(朝霞クンの比喩じゃなくて)も黙る超厳格な監査だったけど、それ以外ではそこまでキッチリカッチリでもない。
部活ではああだからおっかないとか声かけるのが怖いって印象を持たれがちな裕貴さんだけど、カスタードクリームをカステラ生地で包んで蒸したお菓子が好きっていう可愛い面もある。
「お前デキ過ぎてムカつくわ」
「すみませーん」
「うん、部活でもお前は流刑地じゃなきゃ幹部だったよな」
「……やめてくださいよ裕貴さん、幹部なんて柄じゃない」
幹部なんてやってたら息が詰まって〜、俺の良さなんて全部消えちゃいますよ〜。でしょでしょ〜。なんてね。しばらくご無沙汰な口調で言う。ホント久し振りだこれ。
裕貴さんにそういう風に見られているのは光栄だけど、部活に関してはやっぱりね。俺は自由に楽しくやりたいっていうワガママでメグちゃんや朝霞クンに何でも押しつけて、背負わせてきたっていう反省もあるし。
「それに、裕貴さんが思うほど、俺はデキた人間じゃありません」
「そう簡単にデキた人間なんかいてたまるか」
「それは言っちゃダメでしょ」
「デキるデキないとは別に俺がお前を気に入ってる、それじゃダメか」
「嬉しいですよ。俺も裕貴さんを慕ってます」
裕貴さんとは部活よりもゼミでの関わりの方が強い。だから部活で見るあの機械じみた感じじゃなくて、人間臭いところにも触れることが出来ているのが大きいのかもしれない。
「たまには雄平にも顔見せてやれよ。俺にお前の消息を聞いてくるくらいだからな」
裕貴さんとこっしーさんは部活の現役の時から仲がいい。今で言う朝霞クンとメグちゃんみたいな感じ。でも、2人の間でそんなことになってるのね。俺って消息不明扱いなの〜!?
「え〜!? 雄平さんだって俺に連絡してこないじゃないですかー! 自分ばっかり朝霞クンとご飯食べたりお酒飲んだりしてー! 俺だって朝霞クンと部活の話抜きにしてそんなのしたことないのに!」
「お前は朝霞の何なんだ」
「元相棒で現友達、ゆくゆくは親友候補ですよ!」
「それなら雄平くらい押し退けて朝霞を飯にでも誘ったらどうだ」
「誘おうとしたら大体こっしーさんに潰されてるんですよ〜! えーんえーん裕貴さん雄平さんがイジメる〜」
「今日辺り誘えばいいだろ。雄平は俺が捕まえとくから」
「裕貴さぁあん…!」
あんまり嬉しくなっちゃって思わず裕貴さんに抱きついちゃったけど、それをよしよしって受け入れてくれる裕貴さんの器のデカさだよね。裕貴さんマジ兄貴…!
「もしもし朝霞クーン!?」
end.
++++
……ホント、洋平ちゃんて朝霞Pの何なんだろうね……()
というワケで先日宇部P部長会の話で初登場した萩さん、部活に関係ないところでの再登場です。洋平ちゃんのゼミの先輩らしい。
洋平ちゃんは世渡り上手だったので部活にそれと言った敵もなく先輩には可愛がられていたそうな。