「何か面白い話ないかなー。圭斗さん、最近三井はどーしてんの?」
「三井は学祭の日に星ヶ丘でやらかしました」
圭斗と村井サンと麻里さん、そしてうち。この4人の食事会になると得てして話題が濃くなる。圭斗は麻里さんに最近あったやらかしを報告している。それを見ながらうちはパスタをうまうまする。
「朝霞もトンだ災難だったな」
「ステージの鬼に直前の妨害はアウトでしょ」
「逆に朝霞君は燃えてましたよ。作品出展でのやらかしもありましたし」
どんだけアイツはやらかしてんだとムラマリさんが顔をしかめる。アイツのそれは死んでも直らないなと結論付け、今に始まったことでもないやらかしの話は終わった。
うちのカバンにはこないだの授業中、三井に書かせたマル秘のルーズリーフはある。あずさちゃんの次に惚れた子の情報が本人の直筆で入っているそれを。だけど、それを出すにはタイミングがある。
「でも、朝霞君の影があるとわかった以上、三井があずさちゃんにこれ以上付きまとうことはないでしょう」
「略奪には懲りたっぽいからね」
「ちょっと距離感が近いくらいで関係を持ってるだの媚びてるだの言ってるくらいですから、生まれてからこれまで男に触れたことのない子じゃないとダメなんでしょうね。変に潔癖なんですよ三井は」
「ん、菜月さん、その後の話を聞いたのかい?」
かくかくしかじか。こないだ聞いたあずさちゃんに対する負け惜しみを話していくと極悪3人衆は大笑い。あれだけ運命だ何だと言っておきながら、男がいると思った瞬間好きでもなかったと言い放つ神経だ。
そして、お客さんにプレゼンテーションをするように、話題をナチュラルに次の季節へと進めていく。決してサクラは咲かない春の話題へ。カバンの爆弾はいつでも出せるように。
「もう次の春が来たのか」
「星大の子で、スタイルが抜群に良くてショートカットの黒髪、サバサバした感じだそうです」
「やっぱ三井の最新情報は菜月さんだわ」
「こちらをお納めください」
机の上には例のルーズリーフ。絵心が壊滅しているとは言え、その子の全身図のどこが特徴なのかは誰が見ても明らかだ。麻里さんはどん引きしている。
「新種のUMAか何かかな? でも、おっぱいですね」
「おっぱいだな」
「名前はサエちゃんていうそうです。学年は1コ下で」
へー、と3人分の声が重なるけれど、みんなの視線はルーズリーフの上にある。
ちなみに、うちは決して三井を辱めたいとかではなく恋愛に対する助言を求められてもうち自身の経験値がアレで参考にはならないだろうから経験豊富な方々やご意見番の皆さまに助言を求めているのであって決して三井の話で面白がりたいとかそんなんじゃないんですよー、と棒読みで。
「でも、サエちゃんという名前の子は星大の放送サークルにはいなかったはずなので、りっちゃんが頭を下げることはなさそうですね」
「いや圭斗お前、りっちゃんに頭下げさすとか無理だろ、ねーわ」
「本来なら僕や村井サンが頭を下げていたのも意味が分からないんですよ」
「ホントそれだよな、冷静に考えたら意味わかんねーよ」
はっはっは、と和やかなホームドラマのように話の中には(笑)が浮かぶ。
「でも、あずさちゃんの件も元々はサークルに関係なかったけど、結局朝霞に繋がって頭下げてるから、どういう繋がりがあるか。ああこわい」
「菜月さん、それは言わないお約束だよ」
「でも圭斗、お前自分には関係ねーモンだから余裕ぶっこきまくってるな」
「ええ、僕に迷惑がかからなければ好きにしてもらっていいんですよ」
end.
++++
菜月さんのカバンが火を噴くぜ! 噴いたー! まあ、行きつく先がこの極悪3人衆なのは基本ですよねー
三井サン、どうやらその昔に人の女性を対象とする春を迎えていたらしい。もちろんサクラは咲いていない。
果たして星大のサエちゃんの件がりっちゃんに屈辱を呼び込むことになってしまうのか! ラブ&ピースラブ&ピース……