UHBCの1・2年の間ではスマホのゲームが流行っている。のだけど、みんなで同じゲームをしてスコアを競っていたあの頃とは変わってきたことが少し。
2年生の先輩は相変わらずライフやアイテムを送り合ったりイベントだーなんだーと楽しそうにしている。何が変わったって、一人黙々と画面をタップし続けているアオだ。
「やっぱり渋滞がヒドいな。バスターミナルを作るにも鍵が足りないし……」
「アオ、何やってるの?」
「交通渋滞をどう緩和しようかと考えてるところ」
「え?」
「シムシティの話ね」
「ああ、シムシティね」
UHBCのゲーム女王だったアオが違うゲームに鞍替えした瞬間、ランキングがうじゃうじゃーっと動くようになった。俺だって頑張れば上位に食い込めるようになったとか革命的だ。
アオは都市環境学科にいるけど、それに至る経緯の大本が高校の先輩にシムシティを教えてもらったことだと言うのだからアオのシムシティにかける熱は俺たちの比じゃない。
「どんな感じなの?」
「見てみる?」
「わー、すごいビルばっかじゃん」
「でもお金が足りなくて交通機関が発達させられないし、渋滞が起きてもお金がないから道路もアップグレード出来なくて。しょうがない、課金しよう」
割と今ナチュラルに課金って言いましたよね。ソシャゲ課金勢というのは廃人と呼べるレベルの人もいるっていうのは林原さんと喋ってて聞いたけど、まさかアオも…!?
「ア、アオ……リアルのお金は大丈夫…?」
「割引の時しか課金しないから大丈夫」
「割引とかあるんだね」
「うん」
そしてアオは何の躊躇もなく課金してゲーム内のプレミアム通貨を購入、その札束でさらにお金を買ってバスターミナルを増設した。好きな人はとことんやるんだなあと思う。
「アオ、よくスマホのゲームにお金かけれるね」
「サドニナは私なんか目じゃないくらい課金してたはず」
「俺があんまりゲームやってこなかったからかもしれないけど、課金し続けたらそのうち普通のゲームソフトよりお金行きそうで。それなら普通のゲーム買えばよくないかなって」
「最近じゃパッケージゲームも課金の上にダウンロードコンテンツ攻勢だし、そんなに変わんないでしょ」
「でも、サービス終了したらスマホゲームはおしまいじゃん」
「他のゲームなら無料で出来ることに越したことはないけど、私はシムシティには出せる」
アオの最後のセリフにぎゅぎゅっと集約されているような気がした。お金を出すからには出せるだけの理由がある。越えてはいけない一線は見極めなきゃいけないけど、出せる物には惜しまないこと。
それをゲームで考えるから俺には手の届かない話になるのであって、これが実際の工芸品やモノで考えればいい話。この技術にこの値段は出せると思えば割とぽーんと出す方だと言われてきた。
「こたつなんて丸も四角も変わんないのに、オール木製の丸いちゃぶ台ごたつにお金をかけるミドリとスマホゲームのシムシティにお金を出すのはそう大差ない。私はシムシティというタイトルとシステムが好きで出してるんであって」
「お金を出す出さないって人それぞれだね。お金を出す人がいなきゃシステムも技術も続かない。それは、どの世界でも同じなのかもしれないね」
「キレイにまとめたつもり? あ、タカティがアイテム買ってった」
「えっ、タカティもシムシティやってるの!?」
end.
++++
蒼希とタカちゃんは地味にシムシティ仲間だったりする。タカちゃんもシミュレーション系は結構好き。
そんなこんなで蒼希のシムシティ話。師匠は慧梨夏。友達の間の流行り事には乗りたい部分がありそうなミドリ、シムシティデビューも近い?
そもそもこの面々の場合、自分で稼いだお金をつぎ込む分には特に問題ないよねえ。大学生だもん。バイトした分がそっちに流れてるだけだよ!