「高木」

 そう呼ばれて高木が声の方に目をやると、シャカシャカと音が鳴り翳されるケース。表には黄緑色で商品名が印字され、それを翳してポーズを取る菜月の表情は勝利者のそれだ。

「奥村先輩、それはもしかして――」
「そうだ。ライムミントだ」

 菜月の翳していたそれはフリスク。ジャンルで言えば清涼菓子に分類されるだろう。菜月の中ではアナウンサー七つ道具のうちの一つにカウントされ、乗り物酔い対策にも使われる。
 MBCCでもフリスクと言えば高木が隙あらばフリスクっつー感じでポイポイと口の中に放り込んでいる姿はよく見かける。片手でケースを開け、そのまま口の中に粒を放る動作はCMさながら。練習したらしい。