「キャー! 紗希ー、あけおめー!」
年が明けたからヒビキに挨拶のメールを送ったら、日が昇ったら初詣に行こうと誘われてさっそく待ち合わせ。出会い頭に上がる声に、改めて新年のあいさつを。
「てか紗希何で着物!? アタシ浮いてる!」
「ちょっと着てみたくなっちゃって」
「着てみたくなったって。着物なんてそうそう持ってる?」
「成人式のときの振袖だよ」
着物着て来るならそう言ってよねーとお叱りを受けたところで、神社に行こうとするヒビキをもうちょっとだけ待ってと足止め。まだ待ってる人がいる。
直クン? さとちゃん? なんて誰々ーと聞いてくるヒビキに対しては、誰かなーって軽くかわしながら。ちなみに、今待ち合わせてるのは1年生でも2年生でもない。
「あっ、来た来た。ヒメちゃん!」
「キャー! 紗希ー、ヒビキー!」
「久し振り〜!」
ちっちゃい体に細い手足。しっかりと盛った髪の毛に完璧なメイク。子供の頃遊んだお姫様の着せ替え人形がそのままリアルになったような。今待っていたのはこのヒメちゃん。
ヒメちゃんもアタシたちと同じABCでアナウンサーとして活動してた。その傍ら、実際にイベントの司会をしたり、テレビのお仕事をしたり。忙しそうでなかなか会えなかったから。
「えっ、この流れまさかレオン来るパターンのヤツ?」
「アヤネちゃんは実家だよ」
「あ、そっか。でもちえみホント久し振りだね!」
「ちえみって言わないで」
「山田ちえみ?」
「もー!」
ど派手な見た目やヒメっていうDJネームに対して、本名はそれらと比べるとちょっと地味かなっていう感じ。山田ちえみというその名前を、本人はちょっと気にしてるみたい。
あたしは可愛いと思うんだけど、ヒメちゃんが言うにはあたしの紗希とかヒビキの郷音っていう名前が可愛いって思うみたいだから。
「ちえみ今日仕事ないの?」
「今日はお休み。今日のヒメは紗希とヒビキだけのモノだからねっ」
「あー、うれしいなー」
「ヒビキもっとちゃんと言って!」
「うれしいなー」
「ヒビキ、ヒメちゃんそろそろ行こっか」
今年のサークルは、みんなそれぞれ忙しくってあたしとヒビキしか同期が揃わないことも少なくなかったから、こうして会うのは本当に久しぶり。
本当はアヤネちゃんもいればもっと良かったんだろうけど、アヤネちゃんは実家に帰ってるみたくって。また機会があればお出掛けに誘いたいな。
「レオンいないとかー、さては逃げたな」
「アヤネちゃんは実家だってば」
「ちえみナンダカンダ言ってレオン大好きだから」
「ないない! レオンとかいうカッコいい名前してるのにそれをイヤだイヤだって贅沢なんだって!」
ヒメちゃんはアヤネちゃんにちょっと怒りながら、あたしはそれを宥めながら、ヒビキは笑いながら神社に向けて歩いていく。やっぱり人が多いなあ、さすがお正月。
「紗希、レオンに何か電話とかしないのー? イジる相手いないとさー」
「うふふ。ヒメちゃんは本当にアヤネちゃんのことが大好きだね」
「そーゆーんじゃないから! アタシばっかイジられてるのって何か違うから!」
こういうやり取りも久し振り。去年はあんまりこういう機会もなかったけど、今年こそはって、ちょっと思っちゃうよね。
「今年は、みんな揃うといいねえ」
ヒビキの言葉に、それを思っていたのがあたしだけじゃなくてちょっと安心したりして。
「ホントだね。それぞれの活躍も見たいけどね。ヒメちゃん次テレビのお仕事いつ?」
「オンエアは明日の3時かな」
「それって昼? 夜? どこチャン?」
「さーて、どーこだ」
end.
++++
青女勢の初詣、までの道のり。紗希ちゃんはきっと振袖が良く似合うだろうなあというところでここで2016年ナノスパはふえるなのすぱんえっくす。
ヒメこと山田ちえみ嬢。お人形さんみたくてちっちゃくてほっそくて実際にお金をもらってイベントやテレビのお仕事をしています。芸名ってあるのかなあ。
名前だけが出て来たもう一人についても今年度中に。どうやらそのキャラは地方から向島に出て来ているタイプらしい。はてさて、パワーアップする青女はどうなることやら。