「……相変わらずすごい戦利品だね直クン」
「あの、ちょっと手伝って沙都子、山が崩れる」

 直クンがプルプルと震える腕で抱えるのは、絶妙なバランスで積み上げられたチョコレートの山。前が見えなくなるほど積み上がった山は、いつ崩れてもおかしくない。
 直クンは女子大に何人かいるイケメンとか王子様の枠に入っていて、去年のバレンタインでも大量のチョコレートに埋もれていた。見た目が長身で中性的っていうのも多分大きいんだと思う。
 Kちゃんが、だから紙袋を持てって言ってるのにと呆れた顔をしている。紙袋なんて最初から持ってたら期待してたみたいじゃない、とせめてもの反論をする直クンの腕からひとつ、またひとつと崩れそうな山のピースを取り除く。