「タカティ、誕生日おめでとー!」
「ありがとう」
かんぱーいと始まる緑ヶ丘流の誕生会。ちなみに、本家緑ヶ丘のサークルでも昨日タカティの誕生日を祝う飲み会が同じタカティの部屋で開催されていたらしい。
タカティの部屋は広いけど、ご飯を食べるには机がない分ちょっと不便。でも、机がないからこそ1年生がわちゃわちゃとお邪魔してもみんな座れるとも言えるし、一長一短。
「お菓子開けよお菓子!」
「あっ、そうだみんなはいこれ。食べて食べてー!」
「ミドリなにこれ」
「ミドリまたこれ?」
アオは前にもこんなことがあったのか、またなのかと聞いているし、そうでないみんなは初めて見る袋にナニナニと興味津々。あたしも袋の小窓から中身を窺ってみる。
「外国の、オーガニックプレッツェルだよー」
「高いんじゃないの、一人一袋とか大丈夫なのミドリいくら時給1000円でも」
「大丈夫だよユキちゃん。人助けだと思って配ってくれーって頼まれてるんだよ、詳しい説明は省くけど」
台所では、エージとおハナがおつまみの支度をしてくれてる。お総菜もいいけどそればっかりだと高くつくもんね。そういうことで、ちょっとした節約志向。
それと、昨日あった緑ヶ丘飲みの後に、冷蔵庫の残りで出来る簡単なメニューのレシピをカズ先輩に教えてもらったらしい。カズ先輩ってすごいね、料理出来るんだ。
「てかミドリこのプレッツェルまだなくならないの?」
「うん、なかなかセンターから減らないね」
「あ、うちに置いといてくれたら減らないかな」
「タカティの部屋に置くの?」
「エイジもよく泊まりに来るし、先輩たちも来るし。果林先輩には結構需要あると思うんだけどなあ」
そんなこんなで、ミドリのバイト先を埋め尽くすほどのケースはタカティの部屋にも少しお裾分けされることになった。
ミドリの部屋と、タカティの部屋の共通点はたまり場になりやすいっていう点。でも、タカティの部屋は緑ヶ丘大学からは結構離れてるのに、大学の人が結構遊びに来るのがすごいなあ。
「あ、そうだタカティ、これ、あたしとミドリから」
「わ、すごい。地ウィスキーって書いてる。え、緑風行ったの?」
「こないだ、レポートの資料集めで藍沢とか緑風とかに行ったんだけど、そのときに見つけたんだー」
「へー、ユキちゃんありがとう。開けていい?」
「どーぞどーぞ!」
タカティのグラスにお酒を注いであげると、それはもうご機嫌そうだからわかりやすいよね。目で見て、香りを確かめて。そして小さく一口。うん、と頷いて。
「おいしい」
「よかった。あたしウィスキーの味はわかんないからちょっと不安だったけど」
「ミドリのプレッツェルとも合いそうだね」
「先輩が言うにはこれ、本場ではビールと一緒に食べるみたいだからお酒と合わせるのは多分正解。こっちで言う枝豆みたいな?」
「……ビール」
「――と、言えば」
みんなでじーっと視線を送ってしまっていたのは台所で奮闘するエージとおハナの緑ヶ丘コンビ。おハナは焼酎とかのイメージの方が強いけど、エージだよね。
「喜びそうな先輩が何人かいるなあ」
「タカティ、昨日持ってってあげてたらよかったね」
「あ、でもここに置いとけば持ってってくれそうだけどね。ミドリ、困ってるならここに持って来て大丈夫だよ。いざとなったら俺のご飯になるし」
「わー! タカティー! これで俺のノルマが達成できるよー!」
「……ミドリ、どんな悪徳商法に引っかかってるの?」
台所からはいい匂いがする。エージとおハナの作るおつまみももうすぐだ。床に直置きなのはしょうがないとして、それはそれでお花見とか、賑やかな宴会風ってことで楽しむしかないよね!
end.
++++
タカ誕にエイハナとミドユキとプレッツェルをぶち込んでみた回。タカちゃんが相対的に薄いかもしれない。
そして昨日に引き続いて蒼希がプレッツェルとのご対面で情報センターを取り巻くプレッツェル地獄に呆れ始めた頃。
と言うかタカちゃんがプレッツェルを主食にするとか言うと割とシャレにならんヤツ。下手すりゃダイチよかシャレにならん