今日から2泊3日の日程で開催される佐藤ゼミの卒論発表合宿。長篠エリアのリゾート地にある緑ヶ丘大学のセミナーハウス……とは名ばかり。
パンフレットやインターネットで見る限り、結構なホテルと言うかロッジと言うか。そりゃ参加費で15000円も取られますよね。バーコーナーは興味深いけど、年齢的にアウトだし。
何が辛かったって、何気に奨学金の振り込み前っていうのが。参加費の他にも雑費は必要になって来る。小遣いと言うべきか。そういうのを捻出するのにも一苦労。いつもなら。
「タカちゃんおはよー」
「あ、果林先輩おはようございます」
とんでもない荷物を背負ってやってきた果林先輩には、その姿を見る人みんなが驚いて、二度見している。体よりも大きいんじゃないかと思うカバンの中身は恐らく非常食。
「よっこいせ」
「何か、すごい荷物ですね」
「ここ最近のアタシは非常食のためにバイトしてたと言っても過言じゃないからね」
「ですよねー」
果林先輩と比べると俺の荷物はとても小さい。いや、非常食を除けば大差ないかもしれない。下手すると、帰りの荷物は俺の方が大きくなるかもわからない。
「あ、こないだのカバンですね」
「そうだよ、折り畳み式最高。帰りもきっとお酒とかお土産とか買って帰っちゃうんだろうな」
「俺も帰りは酒を買いたいと思ってるんですけど如何せん未成年なので、その時はよろしくお願いします」
人をそうやって都合よく使ってくれるからには買ったお酒をご馳走してくれるんですよねー、との上目遣いでの確認にはもちろんと返事をして。
「てかタカちゃんお酒買えるだけのお小遣い持って来てるんだね。余裕あったんだ」
「余裕があったと言うか、余裕を作りました」
「またごはん抜いたんじゃないの?」
「あ、いえ、朝霞先輩から日雇いのバイトに誘ってもらって何回か入ってたので。その給料がちょうど今日の朝に入ってたので助かりました」
「え、朝霞P先輩!? まさかのだよ」
どういうバイトをどんな風にしていたのかという話を果林先輩にすると、向いてる仕事でよかったねと言ってもらった。製品の吊り札付けが果たして俺に向いている仕事なのかはともかく、このタイミングで25000円弱はありがたい。
果林先輩でも25000円を稼ぐ時には2回じゃ足りないから3回は働かなきゃいけない。それだけ稼いだとしてもほとんど食費になってしまうそうだから、何となく想像は付くけどエンゲル係数を計算するのが怖いとも。
「ちょっと余裕が出来そうだったので、スキーも申し込んでありますし」
「レンタル代って意外にするもんね」
「そうなんですよ」
「何て言うかお姉さんタカちゃんがバイトしてたって事実に驚いてるし感動してるよ」
「日雇いですけどね」
「このまま月1でもいいからバイトすればご飯ももうちょっとまともに食べられるようになると思うんだ」
「エイジにも言われます」
「でしょ?」
せめて春休みのうちに貯蓄を作るとか、と果林先輩と一緒にするのは働かないうちからの皮算用。でも、確かに2年生になると今よりかなりタイトなスケジュールになりそうだし。やるなら今のうち、かな?
「問題は働いたから大丈夫かと浪費しないかですね」
「……グッと堪えてタカちゃん、得意でしょ」
「酒とCDは必要経費ですし」
end.
++++
別に合宿には大して関係のないタカちゃんのお小遣い事情のお話。というワケで佐藤ゼミの合宿が始まったけど、心配するのは帰りの荷物のことだったらしい。
タカちゃんを知ってる人からすれば、あのタカちゃんが日雇いとは言えバイトをしていたという事実に\ナ、ナンダッテー!?ー/ってなるんだぜ!
と言うかサービスエリアのお買物で興味があるのはお酒だけど、やっぱりそこはお酒オッケーの2年生を盾にしてるところがちゃっかりしているTKGであった。