ファンタジックフェスタ、通称ファンフェスに向けた番組打ち合わせ、3回目。場所はみんなの家からのほぼ中間点になる、青女近くにある光ヶ丘テラスのカフェ。うーん、アタシはこのアナウンサーをどうするべきか。
「規模は小さいとは言えさ、一般の人も聞く番組じゃない。やっぱり僕みたいに出来る人じゃないと辛いと思うんだよね公開生放送だし。ねえヒビキ。ゴティもそう思うでしょ?」
アタシの班は3人構成。アナウンサーがアタシと向島の三井クン。そしてミキサーは緑ヶ丘の2年生・五島クン。単刀直入に言うと、やりにくい。三井クンて3年生じゃ結構イロモノみたいって言うか、何て言うか。
どこを目指してるのかはわからないんだけど、ファンフェスの番組をオーディションか何かと勘違いしてるのかなっていう雰囲気がチラリ。意識が高いのは結構だけど、めんどくさいったらありゃしない。
「三井サンて何か特殊技能あるんすか?」
「特殊って?」
「特殊まではいかないにしても、何が得意とか」
「ゴティ、難しい質問だね。ほら、僕何でも出来ちゃうから特に何がいいとかって選ぼうとしたらすっごい考えちゃうよ」
「その答え、何気にミキサー泣かせっすよー? どんなに上手かろうがアナさんの特性がわかんねーんじゃ合わせようがないっす」
五島クンはとても優しい子だと思う。アタシが聞くことを放棄し始めてる三井クンの話をちゃんと聞いてあげてるし、ミキサーとしてアナウンサーにどうしてくれ、こうしてくれって要望も出してるし。さすが緑ヶ丘。
て言うか何でも出来ちゃうって自分で言うかな。よっぽどの自信だってことはわかったけど。ピントークはともかくダブルトークどうしよう。話が広がる気がしない。そもそも、何をどう話すかも打ち合わせになってないんだよねまだ。
「ダメダメゴティ、他の班は遠足気分でやってるけど、僕の目が黒いうちはちゃんとやってもらわなきゃあ。低い方低い方にレベルを合わせてたら取り返しがつかなくなっちゃうから。ただでさえファンフェスはぐだぐだなんだからここで差を付けなきゃ!」
「俺が聞く限りじゃ他の班はウチよりガツガツ打ち合わせしてるっぽいっすけどね」
「中身がなきゃ意味ないの」
「まあ、それはそっすね」
「今のインターフェイスの誰がまともな番組を出来んの。だからねゴティ、僕の言う通りにしてれば大丈夫。ほら、緑ヶ丘にいたんじゃレベルの高いアナウンサーさんと番組なんて出来ないでしょ? ミキサーとしても頭打ち。今の緑ヶ丘はぬるま湯だもんね。その点僕についてくればビックリされるよ、いつの間にこんなに上手くなったのって」
カズー、こんなこと言われてますけどー。
大体、ついて行くだけでミキサーが上手くなるとか悪徳商法とか宗教とかによくありそう。病気が治る水とか。あれも結局は話術なんだろうけど、その域にも行かないトーク力とカリスマでそんな勧誘、見向きもされないでしょ。
さて、どうにかしてアタシが主導権を握らなきゃいけないワケだけど。どうしようかなあ。ダブルトークに持ってくかなあ。そっち上手いんだからアタシに合わせてよねーとか何とかムチャクチャ言って引きずり回してやろうかな。
「三井クン、ダブルトークの話でもしない?」
「ダブルトーク、見た目より難しいけど大丈夫? だってヒビキトークタイムとか意識出来る? 公開生放送だよ? 人がいるところで番組とかやったことないでしょ? あー、でも僕がタテで調整するかなあ、でも僕がヨコじゃないとトークの広がりがなあ。初心者の子とダブルトークって難しいなあ」
って言うかアタシ初心者扱いなんだ。そういう認識ならまあ、止めないけど。会話がなかなかキャッチボールにならないし、確かにダブルトークは難しそう。だけど、放送事故にならない程度に頑張ろう。
end.
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ファンフェスのヒビキ班とかいう地雷。実際はもうちょっと楽しい会話が繰り広げられていた模様。
班編成は人間関係も加味して決められるのですが、共演NGが増えても不思議じゃないんだよなあ……(実際いち氏とは共演NGになってる)
三井サンは真面目に班員を心配しているのである。悪気はこれっぽっちもないんや……だがトンチキ枠なのである