ヒロさんが入院した。何か、消化器がやられてたらしい。結構重めのヤツで、しばらくは病院暮らしになるそうだ。サークルの時もマジツラそうだったし、ヒデさんは病院行けって言ってたけど、結局は。
授業を一通りこなしてから、ヒロさんが入院している病院に。初めてのお見舞い。ヒデさんが言うには食べ物とかの差し入れは原則禁止。病室は味気ないだろうから、木製の人形を用意してみた。これくらいなら大丈夫だろ。
「じゃあね〜」
教えてもらった病室の方から出てきた2人組。ヒロさんのお見舞いか。ひっきりなしにお見舞いが来るってのもヒロさんの人望なんだろうけど、うーん、疲れるかな。でも、せっかく来たしなあ。
2人組のうち、髪が金メッシュの方の人と目が合う。物理的に見下ろされるけど、俺がチビだからしょうがない。金メッシュの人はにこーっと笑うから、俺もにかーっと笑い返す。カーディガンを巻いている人はお前ら何やってんだという顔。
「もしかして〜、長野っちの後輩の子?」
「そうっすけど……えっ、何で俺のコト知って」
「松江クンが言ってたんだ〜、今日は後輩の子が来るかも〜って」
「ヒデさんもいるんすね」
「長野っちにずっとついてるみたいだネ。あっ、俺は星ヶ丘の山口洋平〜、で、こっちが」
「朝霞薫だ」
「浜田真司っす」
「じゃあ、君がハマちゃん」
俺たちはインターフェイスで長野っちと仲良くしてるんだよ〜、と金メッシュの洋平さんが経緯を教えてくれた。ヒデさんを冷やかしに行こうとしてたファンタジックフェスタにも出ていて、その現場でこの一報を受けたとは朝霞さんが。
こんな風に、他校の人がわざわざ来てくれるのは嬉しくもあり、羨ましくもあり。ヒロさんの顔の広さを感じる。確か去年は対策委員っていうのをやってたっけ。ラジオメインだからってインターフェイスのイベントには出たことないからさっぱりだけど。
「なんかいいっすね」
「何が〜?」
「AKBCって人が来たり来なかったりっすし、ヒロさんいなくなってから過疎ってる感もちょっと。もうちょっとわいわいやりたいんすけど、人はいねーし。その点ヒロさんは他校に人脈もあってマジパねえっす」
「他校の人脈が“パねえ”なら、インターフェイスの活動に出てみればいいんじゃないか?」
「朝霞さんそう簡単に言いますけど。今ウチ対策委員もいないしヒデさんはあっぷあっぷだし。情報が全然来ないんすもん」
気付いたら、今まで誰にも話したことのない愚痴を、よりにもよって他校の先輩にぶちまけていた。もちろん、AKBCのゆったりした感じも嫌いじゃないけど、もうちょっと、こう。同学年の友達もいっぱい欲しいし。
「来月か、初心者講習会っていうのがある。んだよな、山口」
「そうだね〜」
「今後、インターフェイスのイベントに出るならラジオの基礎知識があるといい。講習会に出とくと後々役に立つと思う」
「えっ、でも参加の手続きとかいろいろあるんじゃないすか」
「ウチの対策委員からそっちに連絡回すように言っとくから、連絡先よこしてくれ」
あれよあれよと連絡先を交換することに。でも、これでちょっと世界が広がりそうだ。つかこの勢いマジパねえ。やっぱ外の人ってパねえ。なるほど、こうやって人脈は作り上げられるのか。
「よし、バッチリだ。戸田――ああ、ウチの対策委員が戸田っていうんだけど、ちょっと警戒心が強い奴だから、何かあったら俺の名前を出してくれ。ちなみに俺は定例会に出てるし」
「了解っす、あざっす」
「俺たちもステージメインだからラジオは下手くそだけど〜、楽しくやれてるよ〜。ハマちゃんもうまくやれるといいね〜」
「はいっす!」
「あ、本題は長野のお見舞いか。引き留めて悪い」
「いえ、あざっした! お気をつけて〜っす!」
end.
++++
ハマちゃんはどのようにしてインターフェイスの活動に出るようになったのか、を考えていたらこんな感じに着地。ハマちゃんmeets洋朝。
コミュ力高い系の3人なので割とスムーズに話し込んでたみたいです。ハマちゃんも十分パねえ。
星ヶ丘の対策委員さんにとって朝霞Pの名前は黄門様の印籠にも似た効果を発揮すると思うので、むしろ2人の最初のやり取りで何か起こってほしいw