どうしたことだ。一生の不覚だ。こんなに大事なことをすっかり忘れていただなんて。危機感に煽られ、2人揃った休みに慌てて病院へ。目的はインフルエンザの予防接種。俺は沙也に予防接種を受けさせていないと思い出したのだ。
 沙也は今年高校受験を控える妹だ。俺の妹とは思えないくらいには素直で可愛い自慢の妹だ。美奈に言わせれば、沙也の分の悪意や性格の不具合を全て引き受けて生まれてきたのが俺、とのことだ。それならば俺は自分の性格の悪ささえも誇れる。
 リンと美奈は予防接種なんか一人で行かせても問題ないだろうし、金を出すのは親の財布からじゃないのかと不思議そうな顔をする。だけど、沙也だけ予防しても意味はないし、兄が予防接種の費用を出してはいけないという法律もない。