西京での会社説明会に参加した後、14歳までいた家に立ち寄ることにしていた。理由は、“父”への挨拶。親の離婚で連れ去られるように向島に来て以来、会ったこともなかった父。大学に行かせてくれているのは父だから、そのお礼も兼ねて。
 父は少し年を取ったように見えるけれど、大きく変わったようには見えない。家も変わりないし。私の部屋だったところもそのままなんだそう。だけど、それは私が死んだみたいだから片付けてほしいと伝えた。

「ただいまー」

 ひょっこりと顔を見せたのは、同じ年頃の男。もしかしなくても、彼が後妻の子。嫌なタイミング。前妻の、それも父とは血の繋がらない子が家に上がり込んでるなんていい気はしないわよね。