「ちーいー」
「あらあずさ。どうしたの」
「あっ、ハルちゃん。ちーは?」
「上がってちょうだい」

 タッパーを手にやってきた大石家。インターホンを鳴らせば、呼んだのとは違う顔があたしを迎えてくれる。
 ちーのお兄さんは女装家で、ベティって名前で店に立ってたりコミュニティラジオで番組をやってたりする町の有名人。本名は大石千晴っていうから、あたしは昔からハルちゃんって呼んでる。
 ちーとあたし、伏見あずさは幼稚園とかからの付き合いの幼馴染み。当然、ハルちゃんとも。ちーと一緒だったのは高校まで。今はあたしが星ヶ丘、ちーは星大に進んだけど家には普通に遊びに行ってるし、付き合いは続いてる。