「う…う……うひゃー!」
あ、この奇声の上げ方は見えた。パターン的に二次元趣味に関するあれこれに違いない。まあしかし我が彼女もわかりやすい。
「今度はどうした」
「片桐さんから誕プレ絵4枚セットいただきましたー!」
そして光の早さでその絵を保存しましたよね。パソコンに保存して、ご丁寧にもUSBにまで突っ込んで。つーかUSBのフォルダ一覧に「片桐さん」てのがあったのは気の所為ですかね。
片桐さんというのは慧梨夏がネット上で仲良くしている友達のひとりで、小さい女の子だとか機械類を描かせるとすごい人らしい。同じ向島エリアに住む男子大学生で、タメだということがわかっている。
「ふふ……うふふふふ……」
「恍惚としてるなー」
「まさか男の人がほも絵くれるなんて思わないじゃないですかあ……あ、4枚全部がBLじゃないからね! それに無理に描かせたワケじゃ!」
「はいはい」
きゃっきゃと慧梨夏が喜ぶ姿に、出会ったばかりの高1の時からから慧梨夏の誕生日には周りの人がお祝いムードだったなあということを思い出す。
高1の時はまだいっちーと宮ちゃんという関係だったのだけど、守銭奴のリンちゃんですら誕生日だからという理由で慧梨夏に紙パックのジュースを奢っていた(今思うと奇跡だ)。
それ以降も、部活の子たちや高ピーをはじめとする生徒会の面々から手厚く祝われて、3年の時なんか先生がホールケーキを買ってきて生徒会室でパーティーやってたとか。
実際の世界だけじゃなくてネット上でも誕生日には誰かしらが慧梨夏(と言うか雨宮さん)の誕生日を祝ってくれるのかというのが素直にすごいなあと感心してしまうのは何故だ。
「でも、厳密には誕生日明日じゃんか」
「明日は片桐さんもイベント出るから忙しいんじゃない? それにうちも明日はネット浮上しないって言ってあるし」
「根回しはしっかりしてあるのな、相変わらず」
「でも世の中ギブ&テイクだからね、11月にはロリツインテで返します!」
「あ、片桐さんは11月生まれなのな」
慧梨夏の精神衛生のことを考えるとこれはこれでいいのかもしれないけど。楽しそうにしてるその内容はともかく表情を見ている分には安心するし。
「でもねカズ、問題がひとつあって」
「どうした」
「うちメカ描くの苦手なの」
「それを俺に言われても」
「幼女にゴツいヘッドホンっていう片桐神テッパンコーデのモデルくれくださいっ!」
「ちょっと待て、何させようとしてる」
「カズ、ショーパンにニーハイ穿こう。長めのケーブルも腕とか脚に絡ませてさ」
そんなこったろうと思ったよちきしょい! 何だよ片桐神テッパンコーデって! それなら単にゴツいヘッドホン貸せでいいじゃねーかっつーかそもそもゴツいヘッドホンと言や俺じゃなくて浅浦だろーが!
「ショーパンにニーハイが嫌ならBL的絡みのモデルでいいよ。もう何人かモブ攻め役連れてくる? それか高崎クンと一緒にお酒飲もうか、酔ったカズが高崎クン襲って逆にロープで拘束され
るトコまで眺めてるから」
「スイマセンニーハイ穿きますんでBLは勘弁してください……」
明日はもう少しそれらしいムードに俺が持っていけたらいいんですけどね、難しいですかね。お願いしますよ慧梨夏さん。
end.
++++
片桐神のテッパンコーデって何ですかね……今年の慧梨夏誕(厳密には前日)話はいろいろ酷いですねw
結局当日のデートでは1時間だけ自由時間をあげちゃったりしていっちーも何だかんだ好き勝手させているようではあるけれど。
うん、確かにゴツいヘッドホンと言えばいっちーじゃなくて浅浦クンだよねえ。