Maniacer's Spiral (R)

「これで僕たち３年生は代表職等々から身を引いて、今後のMMPを第９代に任せるということになります。活動は例年通り秋学期いっぱいまでやるけれど、実権は２年生に渡すことになるね。僕たちの代にはミキサーがいない関係で、特に２年生のミキサー３人には苦労を掛けた面も大きいと思う。それに、アナウンサーばかり３人いたからと言って、ヒロをちゃんと育てて来れたかと言えばそうとも言い切れない。僕たちがいかにいい加減でまとまりがなかったかは、みんなが一番よく知っていると思う。だけど、そんな僕たちの共通の想いが、これから発表する第９代MMPの役職には詰まっています。それでは発表します」

　３年生の先輩方はそれぞれ穏やかな表情をされています。サークルのときに三者が同じような想いで同じような表情を浮かべていることを私たちは見たことがありませんでした。きっと、これからもないでしょう。
　２年生は神妙な面持ちで圭斗先輩のお話を聞いていました。特に野坂さんですね。先輩がいなくなるということを、果たして現実として受け止められるのでしょうか。本当にいなくなってからですね、勝負は。

「まず、書記は奈々。それから、アナウンス部長は自動当選だけどヒロ。もし来年アナウンサーが来た時は僕たちを反面教師にしてしっかりやって欲しい」
「う、うわー、ヒロがアナウンス部長とか世も末だ」
「何ゆーとんのノサカ、ボク最近はちゃんとマジメにやってんよ！　知っとるやろ！」
「問題は、それを春まで維持出来るかスわ」
「まかせてりっちゃん」
「ヒロさんが会計でなくて良かったと言う他にありませんね」
「何ゆーとんのこーたのクセに。でも確かにボク会計はやーやわ」

　これまではひとつの役職だった代表と会計は分けましたと圭斗先輩が補足をして、残る役職は代表と総務、機材管理に会計。私がなるとすれば総務か会計でしょうか。代表と機材管理を野坂さんと土田さんで分ける感じかと思うんですよね。

「それから、総務は神崎」
「はい。あ、菜月先輩、総務は具体的に何をすれば」
「うちがやってたのは主に圭斗の尻拭いだから、お前の場合は新代表へのツッコミだな」
「ん、間違いないね。それじゃあ次、行こうか？」

　確かに野坂さんと土田さんのどちらが代表になったとしてもツッコミが欲しいところではあるんですよね。なるほど、私のツッコミ力を買われて総務への配置ですか。……って、それもどうかと思うんですよねえ。

「えー、次。機材管理」
「やァー、これは自分スわ」
「何を言う、俺だろ。大体律じゃストックリストがいい加減になる気しかしない」
「や、音源漁るのを躊躇う野坂じゃストックが充実しねースわ」
「何をディスり合ってるんですか。発表を聞きなさいよあなたたち」
「うるせーウザドル」
「毛ぇ引っこ抜くぞ」
「そんな時ばかり息がピッタリなんですから」

　でも、わかるんですよ。代表職の重みが。それはつまり、３年生方の共通の想いとやらを背負うことになるんですから。それに、サークルの顔ですからね。責任は重大です。避けたくても当然です。今までみたく好き勝手やっていたいですよね。

「ん、続けていいかい？」
「どうぞどうぞ、話を聞かない人たちは無視してやっちゃってください」
「じゃあ、改めて。機材管理は、野坂。それから、新代表はりっちゃんにお願いすることにしました」
「え、自分スか」
「だね」
「……ま、今までラクさせてもらってたンで、ここらでちったァ頑張りやーす」

　土田さんのこの宣言に自然と拍手が湧きました。少し頑張ると言っても土田さんは土田さんでしょうし、きっとそれが第９代MMPの空気とか、色になっていくんでしょうね。
　――って、私の仕事は新代表へのツッコミって言いましたよね菜月先輩!?　死ねと!?　ラブ＆ピースで死ねと仰います!?

「役職こそあるけど、今まで通り２年生４人と奈々で、まとまって行って欲しい。お前たちがMMPを今よりもっといい場所にしてくれると、僕たちは信じているよ」
「……あの、圭斗先輩」
「何だ神崎、せっかく代表が終わりよければすべて良し風にまとめようとしてたのに」
「会計は、誰が…？」
「あ、忘れてた。そうそう、会計はヒロだね」

　あんまりさらりと言うけれど、それはあまりに衝撃的で。思わず２年生全員の声が揃っていましたよね。

「ナ、ナンダッテー!?」


end.


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MMPの次期人事です。大体の大学で大学祭をもって代替わりです。星ヶ丘以外は一応３年生もまだもう少しいるよ！
次期MMPはこのツッコミ神崎の役割が何気に大きくなってくるんじゃないかなと思ったり思わなかったり。頑張れ常識人
誰が代表とかっていう以上にヒロが会計っていう方が２年生にとっては衝撃的なサプライズ人事だったようです