「ケーキ美味っ」
「美味いですね」

 冷蔵庫から取り出してきたケーキを朝霞とつつきながら、今日の悪夢を必死で消し去ろうとしていた。何が悲しくて朝の6時から向島の極悪三人衆と水鈴に押し掛けてこられなきゃいけないんだと。
 俺の誕生日なんか単なる口実で、連中は俺で遊びたかっただけだというのは明らかだ。尤も、俺の向かいでちびちびとケーキをつつく朝霞にしても、誕生日を口実にした梯子酒ついでに俺とお喋りをしに来たという点では同じなのだが。
 俺たちがつついているケーキは、水鈴の妹の奈々ちゃんが作ってくれた物だ。奈々ちゃんは向島大学に入学したそうで、サークルでは極悪連中の後輩としてミキサーを扱っている。悪の道に染まらなければいいが。