Maniacer's Spiral (R)

「それよりあずさ、こんなにお裾分けしてもらっちゃっていいの？」
「いーのいーの、うちにあったって全然減らないし。それだったらちーとハルちゃんに食べてもらった方が断然いいもん」
「それじゃあありがたくいただくわ。あ、こないだのタッパー今返すわね」
「そうだ、忘れてた」

　ちーとハルちゃんの両親はあたしとちーが小学校５年生の頃に事故で亡くなっている。それからは、ハルちゃんとちーの兄弟２人暮らし。ハルちゃんは一生懸命働いてちーに苦労させないようにって頑張ってて。
　そんな中でうちのお母さんがよく大石家にお裾分けするおかずっていうのをタッパーに詰めてあたしに持たせてたんだよね。ハルちゃんは夜も仕事でいないことが多かったし。それが今でも何となく続いてて。
　そのおかずを作るのがお母さんからあたしになって、あたしの作ったおかずをちーが美味しいねって言って食べてくれて。今じゃ空になったタッパーに今度はちーがキュウリの浅漬けを詰めてくれたりとかしてさ。

「あら、帰って来たかしら」
「ホントだ」

　車がいるなっていう感じの音がしたら、ちーが帰ってきたかなってわかるんだよね。ほら、玄関のドアが開いた。

「ただいまー。兄さん、会社で野菜もらってきたよー」
「おかえりなさい。あら、こんなにもらってきちゃったの？」
「うん。ちょっと、せっかく勧めてもらっちゃったら断り切れないんだもん」

　袋いっぱいの野菜は、ちーがバイトしてる会社のパートさんがやってる畑とかで採れるんだって。ナスに、キュウリに、トマトもある。ちーもハルちゃんもたくさん食べる方だけど、さすがに２人で食べるのはキツそうな山盛り。

「本当はプールに行くつもりだったんだけど、野菜持ってたら直帰するしかなくてさ」
「確かに思ったより早かったわ」
「そう言えばあずさ、どうしたの？」
「お中元のお裾分け。うちでそうめんとハムが山盛りになっててさ」
「わー、わざわざありがとう。あっ、あずさ、この野菜少し持ってく？」
「ちーは使わないの？」
「うちでも食べるけど、さすがにちょっと多いから」

　ナスとキュウリとトマトをそれぞれ３個ずついただくことに。作るとすれば何がいいかな。トマトは切ってそのまま食べてもいいくらいだけど。まあ、帰ってから考えよう。お母さんが使うかもしれないし。

「って言うかちー、今日はもうプール行かないの？」
「明日が向舞祭の練習だし今日行っときたいんだよね本当は」

　夏休みはちーの稼ぎ時。バイトしてる会社の繁忙期と春と夏の休みがバッチリ重なってて。だけど、今年の夏はサークルの関係で向舞祭の司会に駆り出されてるんだって。それでバイトがなかなか入れられなくって〜っていう話は聞いた。
　ちーが昼も夜もなく残業大好きーっていう感じでバタバタ働いているのは学費を捻出するため。ハルちゃんの稼いだお金はハルちゃんに自由に使ってほしいからって言って、バイト代から学費の一部を出していて。
　でもちーの働き方が本当にムチャなんだよね。それこそ文字通りに朝から晩までだし。本人は早出と残業のおかげで日給１万超えって言って喜んでるけど、ハルちゃんは「ちーは自分の体力を過信してるのよ」って言って心配してる。
　最近では会社でもちーの時給を上げて拘束時間を短くするようにしてくれてるみたいだけど、ちーはもっと働きたいのにって不満げですよね！　向舞祭の練習でバイトに入れてない現状、正直ハルちゃんはちょっとホッとしてるみたい。

「あ、そうだ兄さん。明後日だけど、会社の社員さんに焼肉に誘われたから行って来るよ」
「わかったわ。でもいいわね、焼肉」
「うん。何か、どうせ食べるなら食べっぷりのいい人と食べたいんだってー」
「あら、だったらちーは適任ね。たくさん食べてらっしゃい」
「えーいいなー焼肉！　社員さんの奢り!?」
「わかんないけどさすがに出すよ自分でも。焼肉って安くないし」


end.


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よくよく考えたらふしみんも割と秋冬系のキャラクターだなあと気付く夏。台本にわーわー言ってるんだろうけど……
夏はちーちゃんがよくプールに通うようになるんだろうけど、季節問わず通ってましたねそう言えば。冬でも水着を新調するよ！
しかし、ちーちゃんと焼肉か……ちーちゃんよく食べるし焼肉の食べ放題プランだとしても何かすごいことになりそうですね