軽く2回ノックをして、重厚な扉を押し開く。失礼しますと一礼すれば、中からはどうぞと返って来る。
 いつ来てもこの文化会役員室という部屋の雰囲気には慣れない。絨毯の床に皮張りのソファや観葉植物が置かれていて、本当にどこかの会社の応接間のよう。この建物自体は殺風景なのに、扉の向こうはまるで別世界のように思えた。
 文化会役員の中でも、さらに限られた役職の者しかこの部屋に席を持つことは出来ないそうだ。監査席で書類仕事中だった萩さんは、私の顔を見ると応接用のソファに移動した。