1月9日水曜日午前9時半、ピンクの外壁をしたいかにもな女性専用マンションの最上階に立ち、その部屋のインターホンを鳴らした。時間には基本厳格な奴だ。一度鳴らせば出て来るだろうとは過去の経験から。しかし、音沙汰がない。もう一度、インターホンを鳴らす。
 インターホンを2度鳴らしてしばらくの間の後に、ガチャリと鍵の開く音。ようやくか。4階まで上って来たとは言え外で待つのは寒いし、何よりピンクの外壁をした女性専用マンションに男が立っているというのがまた異質な光景なのだ。早く出て来てもらって下まで降りたい。

「――ってお前、まさか寝起きか」
「本当に今起きた……悪い、上がってちょっと待っててくれるか」

 ドアを開けた菜月は、部屋着にメガネのガチなオフモード。髪も跳ねて少しボサボサだ。俺が鳴らしたインターホンで起きたらしく、どうやらこれから身支度を始めるらしい。と言うかいくら俺でも一応は来客なのだから、あまりガチなオフモードで出て来るのもどうかと。