大学構内に高く聳える黒い建物、それが星ヶ丘大学の部室棟だ。その一角にあるミーティングルームを占拠して活動しているのが、部員60人ほどを擁する放送部。星ヶ丘大学放送部は、主にステージイベントを中心に活動していて、夏には星港市有数の丸の池公園でイベントを行ったりしている。
 パッと見華やかな放送部だけど、その内情は救いがないほど腐りきっている。部を束ねる幹部はその権力に驕り、自分たちに都合の悪い部員を力で押さえつけている。そして、部内で決めるパートでも差別があって、自分は偉いんだと勘違いしたプロデューサーがイキり散らす。
 こう言うと、お前の見方が穿ってるんだろと思われるかもしれない。だけどアタシは自分の置かれている状況を素直に言っているだけに過ぎない。現にアタシ、戸田つばめは幹部に楯突いた結果流刑地と呼ばれるところに島流しにされた。幹部に物申したのは、ディレクターの処遇改善についてだ。
 だだっ広いミーティングルームはパーテーションで班ごとにブースが仕切られている。ステージは班ごとに企画していくもの。今の放送部には7つだかの班があるんだけど、ブースの広さも部の待遇に比例しているような気しかしない。流刑地と呼ばれる朝霞班のブースは、畳2枚分あるかないかのスペースしかないのだから。