何か食う物はないかとゼミ室の冷蔵庫を開けると、何やら見慣れん容器があった。誰の物だと記名がしてあるワケではない。岡本ゼミ冷蔵庫の掟に従えば、無記名の物を食う分には何の問題はない。何やら目の細かい網のような物で何やら汁を濾しているようだ。網目が細かすぎて何が入っているのかはわからん。
 さすがのオレでも得体の知れない物に手を出そうかという気にはならん。それに、無記名とは言え名前を書き忘れて放置されたワケではなく、明らかに誰かがそうした物だろう。やや黄色味がかった液体が濾されているが、何か料理でもしようというのか。まあ、料理という単語が考えの中に出て来た時点で誰の物かは多少予測出来るが。
 しかし食う物が無い。せっかくバイトの合間の休憩時間で1時間ほどこっちに戻って来たというのに。これならまだ情報センターの事務所の方が、春山さんが山積みにしている土産類があって食う分には困らんかったな。こっちはラーメンの備蓄も切れているし。切らした奴は誰だ。……オレか。