「あっ、いたいた! おーい石川、それに福井さんも!」
「高井、どうした?」

 筒状に丸めた紙を手に、そいつはやってきた。俺たちを見つけると喜びを表現して目の前に陣取る。高井圭希、岡本ゼミの中でも無駄に熱く鬱陶しい男だ。高井は今年から星大に編入してきた。だからなのか本人の性格なのかはわからないが、見る物すべてに大袈裟な反応を見せる。

「今さ、大学祭のブース説明会に出て来てさ」
「ブース説明会? 授業も始まってない時期にやってるのか」
「何かそうらしい。で、ゼミの3年で出るからその諸々の手続きとかしてたんだけど、そろそろ本腰入れて準備をしなきゃいけないなと」
「……徹、今、彼……何て…?」
「俺も聞こえなかったことにしたい」