「圭斗」
「ん?」
「あのさあ、山口からメールが来たんだけどさ」
「山口君から? 何て。もしやまた三井がやらかしたとか」
「いや、それはまた別件なんだけど、今度、朝霞の家で玉子焼きを食べる会っていうのが開かれるそうなんだ。良かったら圭斗にも来てほしいって」
「僕も? またどうして」
「それは知らないけど、向島と星ヶ丘の人数バランスを揃えるとか、朝霞がいるから定例会の人間を用意するとか、そういうアレなんじゃないのか、知らないけど」

 事の発端は去年にまで遡る。夏合宿が終わって平和な時間の流れ方になった対策委員の会議中、玉子焼きの話になったことがあった。甘い玉子焼きはおかずか否かみたいな話だとか、玉子焼きは玉子焼きだから結局のところはうまーなんじゃないかとか。地域によっても好みの味が違うとかなんとか。
 うちもそんな話をしていたなんて忘れてたんだけど、山口はその玉子焼きの話を覚えていたらしい。いつかうちに自分の焼いた玉子焼きを食べさせてくれるということも。ちなみに、その話は朝霞の部屋で玉子焼きを焼いていて思い出したそうだ。「思い出したし、やっとく?」みたいなノリだったようだ。