12月に入り、学内にもスーツ姿の学生が増えたように思う。かく言う僕もその中の一人ではあるけれど。
 向島大学の学内でも企業セミナーが開かれるようになった。興味のあるセミナーを探して予約を入れていくと、僕たち3年生もいよいよ就職活動のスタートかと実感する。

 見慣れないひとつ結びを下げた彼女の目は死んでいる。着慣れないスーツに疲れているのか、それともいつものブーツよりもヒールの低いパンプスに足が動かないのか。
 遠目に見ただけでも、彼女に生気がないのはわかった。就職活動は、彼女の否定する「将来」に向けた動きだ。否応なしにそれを意識させられて、気持ちが沈んでいると考えるのが自然。