「L、大分使い倒してるねマフラー」
「そうなんすよね」
元は明るめのベージュだったそれも、今ではもう色がくすんでしまっていた。やっぱり、誰が見ても古くなっているのかというのをカズ先輩に言われて最確認。
「いつから使ってんの?」
「ちゃんとは覚えてないっすけど、高校の時にはしてたっすね。だから4、5年すかね」
「やっぱりそれくらいだと古くなるよな」
カズ先輩はうんうんと頷き、やっぱり4、5年が目処だなと何やら考え込んでいる。でも、こういう時のカズ先輩をヘタに突っつくと彼女さんとの惚気話になるというのは経験上、察するところ。
そう言うカズ先輩は、マフラーではなくネックウォーマーを使っている。薄手だけどしっかりと首を守ってあったかいらしい。きっと、マフラーをぐるぐる巻きにするとバイクに乗るときに不便なのだろう。
「おはようございます」
「おはよー、ってタカシお前まだジャケットで頑張ってんの!?」
「はい、今から上着を着てたらもっと寒くなってから耐えられないと思って。まだイケそうですし」
ひょっこりとやってきた高木の服装にはカズ先輩も俺もただただ呆気に取られた。冬っぽい素材というワケでもない普通のジャケットにシャツを着ているだけ。
12月に入って向島エリアでも大分寒くなってきているというのにコイツはバカなんじゃないかと。いや、既に高崎先輩にはバカだと言われていた気がする。
「タカシ、マフラーとかは持ってないの?」
「持ってないですね。あると便利だなとは思うんですけど」
「いやいやいや、お前それは見た目に寒いって」
俺なんてピーコート着てマフラーして、インナーにもヒートテック着てんのにまだまだ寒いし、高崎先輩だってめっちゃ重装備してる。でも高木には季節感も何もあったモンじゃないなと。
「ははーん、もしかしてタカシ、クリスマスにもらえる系のヤツか」
「まあ、相手がいないですけどね」
「まだ間に合うじゃん。どうだ、そろそろデートの誘いでも。あっ、でもイブは火曜日だから深夜はバイトしてるか」
「そうやっていつもの流れに持ってくのなしですよ」
「ちぇー。でもマフラーと言えばさ、咲良さんの趣味が編み物なんだよなー」
「えっ、マジすか」
「俺も編み物教えてもらおうかなー、夜なべしてマフラー編むのもいいかもしれない」
さあいつものヤツが始まるぞと構えれば、カズ先輩の目が明後日の方向にいる彼女さんではなく目の前の高木に向いている。そしてポンと肩に手をやって「やっぱり黒がいい?」と確認するんだ。
「タカシ、お前がマフラー買う予定ないなら俺がお前に編もうか」
「いや、伊東先輩そこまでしてもらわなくても。と言うか彼女さんに編んであげたらいいんじゃないですか」
「それはもちろん視野に入れてるよ。ほら、練習しないとだし。イブまでに編めるかな、いや、俺なら頑張ればイケる」
さあ今度こそ始まるぞ。
そして俺は自分のマフラーのことを考える。今はベージュだけど次はどうしようか。デザインは、素材は。
まあ、次に街に出たときに考えよう。でも今買うと、贈り物ですかと聞かれるのが少し辛いかもしれない。やっぱり来年に持ち越そうかなあ。
end.
++++
MBCCミキサー陣がきゃっきゃしてるだけの回。タカちゃんが相変わらず残念なのといっちーのオカン度が2上がった。
ちなみにタカちゃんの言う「いつもの流れ」というのはタカちゃん×果林的なあれこれ。高崎といっちーが2人の関係を煽ってるヤツ。
いっちーなら本当に夜なべしてマフラー編むのが似合ってしまいそうなので編んでもらえばいいんじゃないかなタカちゃんは。