「女子はすごいよね」
「俺たちは隅っこでひっそりとするのが1番だね」
向島インターフェイス1年生の集まりも回数が増えてきた。多分みんな、誘われれば出てみようという考えだからかもしれない。ファミレスのドリンクバーで女子が盛り上がる中、隅の男子は遠い目を。
俺たちの学年はアナウンサーが多い3年生やミキサーが多い2年生のように、パートごとのバランスが悪いということはないけど、圧倒的に女子の方が多いというバランスの悪さを抱えていた。
しかもその女子がハナちゃんと奈々を中心に爆発的な力で盛り上がりを見せるし、その後ろに控える冷静沈着なアオが軸になっている。青女の面々もハナちゃんと奈々に負けていない。
ゲンゴローは女子の輪の中にも積極的に入って会話をしているけど、俺とミドリは圧倒されて、とても自分から突っ込んで行くことが出来ずにいた。そんな俺たちに呆れるのはエイジ。
「高木、ミドリ。お前らがそんな調子でどーすんだっていう」
「俺たちは遠目から見てるだけでも楽しめるもんね、タカティ」
「そうだね」
「お前らなあ、そんな調子だと尻に敷かれっぱなしになるべ」
「上に立とうとも思ってないしね。ねえミドリ」
「だね」
女子とゲンゴローが盛り上がるテーブルでは、ゲンゴローが何か言ったのか、集中砲火を受けていた。サドニナがパシンパシンと乾いた音を立ててゲンゴローの腕を叩いているし、アオの視線も冷ややかだ。
「ゲンゴローも大変だべ。ま、自業自得だけど」
「顔を見てると満更でもなさそうだね」
「なっち先輩のピンヒールで踏まれて蔑まれたいって言っただけあってきっとマゾヒストなんだよ。エージ、タカティ、俺たちはゲンゴローのハーレムを生暖かく見守ってあげよう」
そんなことを話しているとちょうど紅茶がなくなって、ウーロン茶がなくなったミドリと一緒に席を立つことにした。エイジのグラスも持って、ドリンクの追加へ。
すると女子たちのテーブルからも声がかかる。さすがにもう持てないよと返すと、じゃあ俺の頼むわ、と渡されるゲンゴローのグラス。コーラでと注文が入った。
「俺あったかいのにしよう、ティーバッグあるし。ポットはーっと」
「ミドリ、エイジのお願い。コーラね。氷は抜きで」
「はーい、ってタカティ何やってんの」
「ドリンクバーの定番のヤツ」
各々のグラスを手に席に戻れば、相変わらず女子が盛り上がっていた。自分のグラスと間違わないようにゲンゴローのそれを渡せば、早々にストローから吸い上げる。さあどうなる。
「げっほげっほ!」
「あーゲンゴロー汚い!」
「ちょっ、辛っ、甘っ、なんかわかんない味する!」
「大成功」
コーラの中にガムシロップとタバスコ、その他諸々を入れた特製ドリンクはそれなりの威力だったらしい。するとアオが、何かした?と訊ねてくる。ちょっとね、と返すと無表情でのピースサイン。
「タカティがゲンゴローで遊んだ! 1年生の民意だ!」
「えーと、民意?」
「IFって個性的な人が多いけどタカティは常識人だし、困ったらタカティの言うことがうちらの学年の民意ということにしようってさっき多数決で決まったんだよ」
「なにそれ」
「タカティが白と言えば白、黒と言えば黒」
「高木が常識人に見えるっていう時点で確かにお前ら全員変人だべ」
何だかよくわからないことになっているけど、どうやら俺は尻に敷かれっぱなしにはならなそうな、「民意」という不思議なポジションに就くことが出来たらしい。
男子は少ないけれど、その分チームワークをよくして女子に負けないように頑張ろう。そんな雰囲気が俺たちを包み始めていた中、ゲンゴローがひっ叩かれる音がまた響き始めた。
end.
++++
1年男子がんばれなインターフェイス回。タカちゃんとミドリのまったりコンビはきっとIF1年の癒し。メガネコンビタカミドかわいい。
ゲンゴローは2年生で言うところの神崎から常識人成分を引いた感じかしら。ドMハーレム野郎だよ!
この学年のリーダーはきっと蒼希なんだろうけど、エイジが最たる常識人で陰のリーダーだといいなあと思う今日この頃。