テストテストと言うけれど、1・2年ならともかく3年後期にもなって教職だの何だのと資格関係以外にキツキツに履修してる方がどうかしてるんだ。
テストを終えて偶然鉢合わせた伊東と第2学食で休憩しながらの雑談は、紙の躍る周りのテーブルとは比較にならないほどすっきりとしていた。
「お前はあと何個あるんだ」
「俺はあと1コかな。今期は4コマ履修してるんだけど、うち1コマはゼミだから」
「お前も結構早いんだな」
「高ピーもそんな変わんないでしょ」
「まあな」
そして思い出すのはテストだと慌てているポニーテールだ。アイツの場合、元々授業にあんま出ねえんだから直前になって慌てるのも出席が足りなくて単位を落とすのも自業自得ではある。
目の前にいる彼氏によれば、さすがに3年後期ともなるとそろそろちゃんとしなければならないという危機感が芽生えてきたようで、今日もしっぽを揺らしながら渋々登校したらしい。
「慧梨夏はちゃんとやればいいんだけど如何せんムラっ気がね」
「趣味にかまけて外に出れなくなってちゃ論外だな」
「だから俺も心を鬼にして朝はちゃんと起こしてるよ。夜中までゲームやネットもさせないようにして」
「お前はアイツの親か何かか、つーか小学生か」
むしろそこまでしないと起きられない宮ちゃんの方にも問題があるんじゃねえかと思ったけど、その結果が単位数だ。ただ、伊東はちょっと甘やかし過ぎじゃねえかとも思う。
いくら自分の履修が少なくて余裕があるからっつって、彼女とは言え他人の世話を何から何までしてやるとか俺には到底理解できない。少なくとも俺なら一言忠告だけして後は放置する。
「つーか宮ちゃんはちゃんとやりゃ出来んだから、お前が世話しないならしないなりに、なるようになるだろ」
「まあそうなんだろうけどね」
「何が問題だ」
「何だろな、わかってるんだけどね、所詮俺の自己満足だって」
「だな。確かに宮ちゃん中心でてめェのない世界で動くお前の自己満足だ。でも、その自己満足が成果になってるから止められないんだろ」
「うーん、難しくてよくわかんないけどね」
でもそれが日常になっちゃってるからな、と。これからも宮ちゃんの世話をやめようとはしないその姿に、コイツの世界から宮ちゃんが消えたらどうなるんだと思ったけど、言わないでおいた。
あくまでコイツも他人だ。誰と何をして、どうなろうが俺の知ったことじゃない。本人が幸せならそれでいい。他人に迷惑さえかけなければどうぞ好きにしてくれと。柄にもなく介入し過ぎた。
「高ピー、テスト終わったら飲まない?」
「お前がぐだぐだにならねえなら考えてやってもいいぞ」
「大丈夫、俺はご飯作るし。いつもの無制限の要領でさ、打ち上げ的なことやろうよMBCCで」
「まあ、お前が世話役やるならやるか」
彼女だろうとサークルだろうと、ここまで世話好きなのは病気か何かか。俺だったら慈善事業でやってんじゃねえんだぞ、と投げ出してしまいそうな物だけど。
「よーし、テスト期間中はバイトも入れてないし、新レシピの開発に乗り出そうかな」
「おっ、それは楽しみだ」
わかんねえのは世話好きのメカニズムだ。俺にはない部分だけに。
end.
++++
こうしていっちーの家事スキルがまた上がっていくのであった。MBCCの飲み会だとご飯必須だからね!
慧梨夏のお世話という仕事に若干依存している感のあるいっちーですが、高崎の言葉を借りると本人たちが幸せならそれでね。
もちろん語られていないところではしっかりバシッと旦那らしく決めてくれていると信じて。慧梨夏もたまには慎ましくあるといいね!