「おはよー高ピー」
「あっ、高崎クンおはよー」
「おっ、バカップル。うーす」
6月にもなってるのに宮ちゃんが大学に来てるだと? その事実にに驚いて一瞬今日の日付を確認したが、6月、だよな。まあ、さすがに3年にもなると危機感を抱き始めてもおかしくはねえよな。
「宮ちゃんもたまには来てるのな」
「最近は割と来てますー、一応授業は週4とかであるし」
「うーわっ、週4とかたりィな」
「ンもう、カズと同じこと言わないでよ」
全休の数が違うのは今までの行いと言う以外にないじゃねえか。各方面から言われてそれは嫌でも突き刺さる事実だろって。1・2年の時にサボりまくったツケだ。
俺や伊東は講義をサボるということはあまりない。いや、全くとは言い切れないが、宮ちゃんほどじゃない。その結果、3年になって比較的余裕の出来た履修表。全休もいくらかある。
「あっ、高ピーこないだ買ったTシャツさっそく着てるんだね」
「おう」
「靴はどうしたの?」
「あれは今度下ろすつもりだ」
「ちょっ、2人の間の秘密の共有とか!」
「はあ?」
その詳細を詳しく! などと興奮し始めたこの女がまた、何にでも萌えを見いだして生きる力に変換しやがる厄介な性質を持っている。その所為で単位落としまくってきてんのにな。
簡潔に言えば、こないだ全休だったときに伊東とツーリングがてらアウトレットモールに買い物に行ってきたというだけの話で、その時買ったTシャツを着てきたのが今日。
その話にこの女は身悶えている。それこそ文字通りに。俺と伊東の買い物の様子を妄想しているのがだだ漏れだ。今度はコイツ、これをネタに何日引き籠もれるんだろうな。
「カズは優柔不断だからきっと高崎クンに服選んでもらったんだろうな。ねーねー高ピーこれとこれどっちがいい? ふあーこ・れ・は! 試着室から出てきて「どう、似合ってる?」のシチュのヤツだ、王道だけどこれはデートの鉄板だもの欠かせないよね…! 高崎クンは服でも靴でも選ぶの早いしそういうところの決断力と高崎クンの着こなしにカズが惚れ直すパターンのヤツだよこれおかわりください」
「つーか、宮ちゃんが思ってるようなことは何もねえからな」
「ムダだよ高ピー、そんな公式慧梨夏には関係ないから」
目の前で手をひらひらさせてもこっちに戻ってくる様子がないところからすると、宮ちゃんの陥落は早いのかもしれない。学期末になって焦る姿がまた見られるだろうか。
「でもカズも高崎クンもいけずだよね」
「何がだよ」
「デートするなら言ってくれればよかったのに…! そしたらバレない程度に尾行したのになあ〜!」
「つーか宮ちゃんその日普通に授業入ってる日だっただろ」
「授業がなかったら誘ってくれましたか」
「何でバカップルのデートに俺が付き合わなきゃいけねえんだ」
「ほらー!」
そもそもお前はこの季節、暑いだの焼けたくないだのと言って外に出ないの前提だろと言ってやれば、黙らせることに成功。ただ、萌えの前にはそんなの関係ないですよね、とまた開き直るのだ。
「そういやお前、木曜2限だけ妙にマジメに出てんのって担当してる奴が萌える属性だから観察するとかいう名目だったよな」
「もちろん。若手で気弱そうでメガネでスーツで。90分楽しいよね」
こんな宮ちゃんにも、生きる気力があるならいいかなと伊東は諦めている。まあ、それを自分で捻出出来る辺りは尊敬にも値する。ただ、授業に出てくるのはいつまで保つかな。
end.
++++
高崎といっちーが一緒に買い物をしている妄想が頭に浮かんでいたところで、もし慧梨夏がこの立場だったら?と。こうなりました。
まあ、慧梨夏は彼氏が妄想対象として完璧という時点で生きる気力どころの騒ぎじゃないですよね。今年は放置されるの決定してるし引き籠もりも加速するか?
久々に出た高崎といち氏の二輪乗り設定。ツーリングがてらというところがこの2人ならではかな。他のキャラなら車か電車だもの。