「それじゃあ、朝霞班へのゲンゴローの歓迎会を開催しまーす! かんぱーい!」
「かんぱーい」
場所は、洋平がバイトしてる居酒屋。ゲンゴローはご丁寧にもまだアルコールは飲まないのだとコーラでの乾杯(まあ、本来はそうあるべきなんだけど)。
部内ではみ出し物の流刑地とまで呼ばれている朝霞班だけに、配属されて喜ぶ人間なんてまずいない。案の定、その話は聞いていたのかゲンゴローも不安げな顔をしていた。
ゲンゴローがなぜこの朝霞班に配属になったのかと言えば、こないだ行われた初心者講習会の場で他校の人と積極的にコミュニケーションを取っていたから。不穏分子ではなく、友好型のはみ出し者。
「わざわざ歓迎会なんてやってもらえるんですね」
「ま、これが朝霞班の色ってことで」
「山口がバイトしてる店だから少し安くしてもらえるっていうのもあるし、イベント後の打ち上げも俺たちはここでやってるんだ」
「そうなんですね」
ただでさえ部活全体からは切り離された班だけに、せめて班の中だけでもしっかりまとまっておこう。はみ出し者の班での個別の飲み会は、そんなようなことらしい。
「源、初心者講習会はどうだった? ミキサーの方で出てたんだったよな。カズが講師やってたんだっけか」
「すごく分かりやすかったんで感激しました」
「そうか、ならよかった。これからもインターフェイスのイベントには出るつもりなのか?」
「そうですね、楽しかったんで出てみようかと」
せっかくの飲み会なのに朝霞サンは真面目な話ばかりなんだから。る〜び〜を飲みつつそんな風に呆れていたのだけど、洋平がポツリ、それが朝霞クンの色なんだからと。
確かに待ち侘びた班員であることには違いなかった。それも、手薄なポジションであるミキサー。これで機材面での負担がアタシ1人にかかることはない。朝霞サンは朝霞サンなりに浮かれているようだった。
「あ〜つばちゃん、何か直前で講師変わったって聞いたよ?」
「最初予定してた講師からドタキャン食らって、急遽なっちサンに」
「へー、さすが議長サン。やるなあ」
「野坂が手を回してくれて、辛うじて首の皮1枚で繋がった感じ」
「お疲れさまでした」
ピッチャーから洋平が注いでくれるビールをトットットッと受け、改めての乾杯を。こんなんでも一応前の対策委員だけに、愚痴るならやっぱり洋平だ。一定の理解は示してくれる。
ゲンゴローは相変わらず朝霞サンからインターフェイス講釈を受けている。インターフェイスに出ながらこの部内でやっていくために必要な物は〜、などと。つか朝霞サン今日ずっと朝霞Pなの?
「つばちゃん、ゲンゴローはそんなに他校の子と喋ってたの?」
「と言うか、他校の子としか喋ってなかった」
「マジかあ、やるなあ。星ヶ丘って伝統的に内輪で群れるのにね」
「で、ちょっと違うなあと思ったワケ」
一方ではインターフェイス講釈、また一方では対策委員での愚痴大会。果たしてこれは本当に1年生の歓迎会なのか。ただ、班の雰囲気を存分に味わってもらえている自信はある。
「あ、つばちゃん焼き鳥食べる?」
「欲しい」
「朝霞クーン、焼き鳥ー」
「皮。塩で」
「ゲンゴローはー?」
「あっ、お任せで」
「は〜い、待ってて焼いてくるくる〜」
アタシたちは各パート1人ずつしかいないファイアーフォーメーションでやるしかないのだ。何度蹴落とされても蘇る、火の鳥か不死鳥か。せっかく一本釣りしたミキサーに逃げられてたまるか。
「あっ、つばめ先輩ビール注ぎましょうか」
「おっ、気が利くねえ頼むよー」
「それで、初心者講習会の裏側なんかは――」
end.
++++
朝霞Pめんどくせえwww 特に酔っているとかではないけど、少し熱が入っていた模様。朝霞Pお酒が入ると顔赤くなりそうだよね。
そしてつばちゃんにお酌をする体で朝霞Pのインターフェイス講釈から逃れたゲンゴロー、有能かもしれない。
洋平ちゃんは自分がバイトしてる店だから普通に飲みながらお仕事をしてるような感じ。自分たちのオーダーしたものなんかは自分で作ったり持って来たりするよ!