「それではー、IFサッカー部創設者、我らがよっぺの誕生日を祝ってー、かんぱーい!」
IFサッカー部部長の音頭でかんぱーいという声が部屋中に響けば、それはもうごく普通の飲み会の風景。部屋に流されているのは伊東クンセレクション、現時点でのワールドカップ好ゲーム。
今日は日曜日という事情もあってそこまで大人数ではないけど、この飲み会の会場になってる伊東クンの部屋には学校を問わず、そこそこの人数が集まった。
俺の誕生日なんてのはみんなで集まりたいがための、飲みたいがための口実でいいんだよね。その時が楽しくて、関係ない人に迷惑さえかけなけりゃ。
「と言うか、何でIFサッカー部でもない俺が呼ばれたのか理解出来ないんだけど」
「まあまあ、よっぺと言えばカオルみたいなところがあるし」
「ねーよ」
「えー!? 俺と朝霞クンは同じ班の盟友じゃな〜い! でしょでしょ〜?」
「いつの間に盟友になった」
実際、IFサッカー部の集まりというのも形式だけだし、俺の誕生日というのも形式だけ。伊東クンの作る料理がどんどん出てきて、みんなが持ち寄ったお酒を飲んでという緑ヶ丘スタイルの飲み会風景。
うだうだと文句を言っていた朝霞クンも、まあまあ朝霞P飲んでくださいよとちょっとビールを飲ませたらすでにご機嫌な様子。知ってたけど朝霞クン、強くはないよね〜。
「カズ〜、お前結局誕生日は彼女とイチャついてたのか?」
「イチャつけませんでした、初心者講習会だったし」
「マジかよ〜」
「別日に埋め合わせたしね」
「お前なあ、たまにはNOと言う勇気だろー!? IFを捨てる度胸だ!」
朝霞クンが伊東クンを冷やかしてる。と言うか、どうして誕生日に彼女じゃなくてインターフェイスを優先した、というお説教。伊東クンが誰かに絡まれてるっていうのも珍しいなあ。
「よっぺ〜、カオルっていつもこんなだっけー?」
「朝霞クンが酔うとこうなるのはデフォだから〜」
「カオルめんどくせーなあ」
「いや、お前にめんどくさいとか言われる筋合いねーよ」
「酔ってても自我は保てるのね」
大体お前はー、と伊東クンに対するお説教は続く。どうやら定例会の方でも少しずつ募る鬱憤があるのかもしれない。我らが朝霞Pも大変なんだなあと、グラスにビールを注ぎ足してあげた。
でも、下手に絡んだのが失敗だったよね〜、矛先が俺に向いてくるんだから。そもそも、朝霞クンに普段から苦労をかけてるのって部活の人間だしね。
「大体な、お前はいつも無駄に楽観視するわうちの班がギリギリなのに宇部班のヘルプに行くわ、俺が台本調整する苦労わかってんのか」
「ゴメンって」
「結局お前は〜、宇部とのヨリを戻すのか戻さないのかー、えー?」
「ちょっ、カオルそれ詳しく!」
「あー、伊東クン何でもない何でもない! ちょっと朝霞クン、メグちゃんのことは今言わなくてもいいじゃん」
俺の誕生日なんてのはみんなで集まりたいがための、飲みたいがための口実でいいんだよね。でもね、こんな形で過去形の爆弾落とされるとは思ってなかったよねよね〜! だーれー? 朝霞クンに飲ませたのー!
「あ〜、喋りたい喋りたい。喋られたくなければ次の一杯をもらおうか」
「はいはいお客様、ただいまお持ちしますよ」
「よっぺ、誰が主賓かわかんなくなっちゃったね」
「いーのいーの、楽しかったら」
end.
++++
洋平ちゃんの宇部Pの呼び方は、公的な場所では宇部P、通常は宇部ちゃん、もっと突っ込んだ場面になるとメグちゃん呼びになるらしい。
朝霞Pに持ってかれた感のある洋平誕のあれこれ。本当に持って行かれてるなあ……まあ、基本飲んでる人のお世話役だもんなあ。
多分、いち氏<菜月さん<朝霞P、くらいになりそうな勢いよね。何の式かって? そらお酒の弱さよ。菜月さんとの間は多少広いけど。