「……つばめ、目がヤバいな」
「そだね、今日のつばめには触れない方がいいね」
対策委員の会議中、つばめが一瞬メールチェックをしたと思えばそれからずっと目がイっている。気の長い方ではなさそうだし、きっと逆鱗に触れるようなメールだったのだろう。
つばめがトイレに立った隙に果林とひそひそ話し合った結果、いつものつばめに戻るまではイっている目に触れないでおこうということで落ち着いた。
「つばめ、短気な方とは言えあそこまでヤバい目をするってのも珍しくないか?」
「そだね。でも分かりやすく怒鳴ってる時は逆にまだ余裕があるモンだよ、アタシもそうだし」
「そういうもんか……こほん」
「おっとっと」
相変わらずヤバい目をしたつばめがセルフの水を片手に戻ってきた。席に着くなりそれを一気に飲み干して、失礼しましたと一礼。一応、少しは落ち着いたのだろうか。
「つばめ、大丈夫か?」
「いやあ、星ヶ丘の話でね」
「まあ、つばめは部内でも大変だとは聞くからなあ」
「って言うか、うちの班の大道具がバカなカップルに壊されたっていうメールでさ」
「マジか! ステージでそれって致命的じゃね!?」
「そう、それでプッツーン来ちゃって」
「それはクるわ、仕方ない」
星ヶ丘と同じくステージをやる青女の啓子さんもつばめに降り懸かった事態には心中を察して神妙な表情をしている。今星ヶ丘が準備してるのは、部の一大イベントに数えられる丸の池ステージのはずだ。
その大道具が、テストもあって時間もそうそう取れないこの時期に壊されてしまったのだ。もちろん、壊れた箇所は作り直さなければならないし、費用だって無限じゃない。それをどうするか、あの鬼の形相で考えていたという。
「大体さ、人の班の大道具の影でイチャつくなって思わない!? ベタベタ乳繰り合って大道具バターン、ガシャーンですよ。朝霞サンが大道具倒れた瞬間を見たらしいんだけど、それはもう。大惨事ですよ」
「うわっ、マジでいたたまれない……」
「でもね、星ヶ丘って部内クソップル多いから結構茶飯事」
「マジか!」
「物置になってる部室とかも、たま〜に荷物取りに行くので覗いたらクソップルがヤってるとかザラよ、今回もだし。あー気持ち悪い、同じ部内で付き合うとかホント気持ち悪い、あり得ない」
スイマセン1ミリたりとも付き合ってませんが同じサークル内の先輩に片想いをしている俺にもしっかりと突き刺さってますよね! 気持ち悪くてスイマセン!
「こほん。つばめ、ここは対策委員だからまだいいけど2年全体の集まりだったら多分テルが死んでたぞ」
「でも野坂、テルとこまっちゃんは害はなさそうじゃない?」
「まあ。人畜無害って感じだな」
「アタシが言ってるのは公私混同して人に迷惑かけまくるクソップルのことだから」
大道具作り直す費用は材料費とアタシたちの人件費込みでそのクソップルのいる班にしっかり賠償請求してやる、とウエストポーチから電卓を取り出すその目には復讐の炎が揺れている。
結果、つばめをガチで怒らせると怖いということで落ち着いた。大道具は作り直さなければならないらしいけどその辺は朝霞先輩が当事者たちに責任を取らせるらしく、行き過ぎた部内恋愛に対するツケは払うことになるのだろう。
「鬼の朝霞Pに連中の監視を頑張ってもらわなきゃだしレッドブル投資しよ」
「果林、対策委員の会計は圭斗先輩をも上回る鬼会計かもしれない」
「で、ですよねー……」
end.
++++
星ヶ丘は部内恋愛がお盛んな部活です。まあ、60人そこらいれば何組かはカップルが出来るのも自然なことなのかもしれない。
土曜日も日曜日もなく準備準備という段階の丸の池ステージですが、対策委員主催の夏合宿も曜日関係なく動く段階に来ています。班も発表された体だよ!
つばちゃんが常備しているウエストポーチにはある程度のディレクター道具がしっかりと揃っているよ!