「あれー、いないなー」

 短く、ピポンピポンとインターホンを押しても反応がない。もしかして、部屋の主はヘッドホンでもしているのか。反応がないなら反応がないなりに奥義はある。それでも、やっぱり主の反応は欲しいところ。
 キーケースにはバイクの鍵と自分の部屋の鍵、それともうひとつ、この部屋の鍵がある。それを穴に差し込み、ゆっくりと捻る。疚しいことをしてるワケじゃないのになんだこの緊張感は。

「慧梨夏、入るぞー」