テスト期間を迎え、学内も人でごった返すようになってきた。こうなると、昼ご飯を食べるのもいっぱいいっぱい。ちょっと前までは歩くにも苦労しなかったのに、今までどこにこんなに潜んでたんだろう。
やっとの思いで取った場所は、2人席。3限のテストに備えてケータイを机の上に乗せる。テストの内容はわかってるから、ある程度予習しておくのは悪いコトじゃない。
「あ、果林先輩おはようございます」
「あっ、タカちゃんおはよー」
同じように座る場所を求めて彷徨っていたタカちゃんを迎え、2人でのランチタイム。学部学科が同じだけあって、通じる話も多い。次の3限も、同じ授業を取ってたりするし。
「果林先輩、広告論って確かテスト100%でしたよね」
「そだね。授業中にも小レポート取ってたけど、一応テスト100%だよ」
「テストって何が出るんですかね……論述じゃないと助かるんですけど」
「えっ、タカちゃんもうテストの内容発表されてるよ!」
「えっ」
何を的外れなことを言っているのだろうと。広告論って一般教養みたく2つも3つも同じ名前の講義があったかなと一瞬考えた。行き着く答えは、前回の授業に出ていなかった。これだな。
広告論のテストの内容がもう発表されているということを聞いたタカちゃんは見るからに驚いて、焦った様子。あ、この調子だと他の教科もちょっとずつ怪しくなってそうだね。
「テスト内容、前回発表されてたよ」
「本当ですか……前回はちょっと寝坊しちゃって出れなかったんですよね」
「寝坊って、3限じゃん」
「通学時間がそこそこあるので」
「あ、そっか」
「果林先輩もそんなに出てる印象はなかったんですけど」
「2年ともなると、出なきゃいけないタイミングは感覚でわかるようになってるし、そこは人脈戦よ」
「なるほど」
先週発表されたテストの内容をタカちゃんに伝えると、それに何かウラがあるんじゃないかと勘繰り始める。そうだよね、アタシだってまだ疑ってるよ。そんなのでいいのかって。
テストの内容が「好きなコマーシャルについて1400字で作文しなさい」だなんてさ。えっ、レポートとか論文じゃなくて作文? みたいな。
まあ、広告費がどうとかそういう難しいことについての論述問題じゃなくて助かったとは思ってるんだけどさ。机の上に置いたケータイでやっていたのは、好きなCMを動画サイトで漁るという予習。
「好きなCMですか……それはそれで少し難しいですね、あまりテレビも見ませんし。何より1400字とは言え作文というのが辛いです」
「1400字で何言ってんの」
「まあ、そうなんですけどね」
出席はほとんど加味されず、1400字の作文ですべてが決まってしまうという逆の怖さもあるけれど。どんなに真面目に勉強してようが、作文の出来がアレなら……みたいな。逆も然りだけど。
「タカちゃんさ、1年生のうちに取れる単位は取っといた方がいいよ〜」
「はい、それはよく聞きます」
「今からダレ始めると後からツラいからね」
「既に1つレポート提出出来なかったんですよね寝坊で」
「うわー」
取れる単位は取って行けと改めて後輩に伝えたところで、アタシは動画をひたすら漁る。気がつくと食べ物動画になっているのは癖のようなものかもしれない。
「果林先輩」
「なに?」
「1年が酒のCMを選ぶのは問題ですかね」
「まあ、実際に飲んでるようなことを書かなきゃ大丈夫じゃない?」
「じゃあ別の無難なのにしときます」
end.
++++
タカりんのテスト談義。と言うかタカちゃんは既にひとつ落としたことが決定してるとか1年生の時点で結構なアレ。後々まで苦労することには設定上なってます。
タカちゃんは作文とかレポートとかそういうのが結構苦手。遅筆とも言う。なので1400字だろうが作文って聞くと拒否反応が出ちゃう。
こういうのを非常に得意としているのが向島のラブ&ピース組(菜月さん&りっちゃん)なんだけど、そっちの様子もやってみたいね。