「……ねえ朝霞クン」
「ん?」
「日付感覚なくなってるっしょ」
班日誌を見ると、それは明らか。ウチの班の日誌は主に班長の朝霞クンがつけていて、どういう練習をしたとか台本を変更したとか、その他の連絡事項が書かれていたりするんだけど。
「そんなことはないつもりだけど」
「思ってるより全然なくなってるよ〜、ナニこのヒドいの。7月なんか特にヒドいよ?」
「どこが酷い? 普通の日誌だろ」
「自覚がないって相当ダネ……つばちゃん来たらジャッジしてもらおうよ」
「俺が勝ったらレッドブル1本奢れよ」
「い〜よ、絶対負けないから」
あくまで日付感覚が狂ってないと言い張る朝霞クンだけど、ホントに相当だよネ。俺はあんまりギャンブルは好きじゃないけど、負けない勝負だから乗るよね。絶対負けないもん。
日付感覚をどうやって取るかって言ったら、金曜日の夜はカレーを食べるとかそういう習慣が大事になってくるんだろうけどね。昼も夜も曜日も関係なくステージ中心の生活してちゃあ、ネ。
班長席の後ろ、朝霞クンの背中には「丸の池まであと○日!」っていうカレンダーもある。その数字を書き直しているのは朝霞クンだけど、ただ惰性で数字を減らしてるだけに違いないんだ。
と言うか、今の朝霞クンがステージ本番からその数字を引いた今日の日付を逆算できるはずもないんだよねよね〜。それはさすがにバカにしすぎてるって? これが、大袈裟じゃないんだから全然。
「おはよーございまーす」
「おっ、戸田。ちょうどいいところに」
「どーしたんですか朝霞サン」
「日誌を見てくれないか。山口が俺の日付感覚を疑ってくるんだ」
「つばちゃん朝霞クンったらヒドいんだよ!」
「……そんな下らないことで争ってんのか」
ステージ前だというのにそんなことで。つばちゃんの顔が心底俺たちに呆れているのを言葉以上に伝えた。これはさすがに低次元過ぎたか。朝霞クンと顔を見合わせ、つばちゃんに軽くぺこり。
「てか朝霞サンの日付感覚なんて日誌見るまでもないじゃないですか」
「は?」
「朝霞サン多分気付いてないと思うけど、アタシに台本の変更点とかくれるとき日付書いてくれてるじゃないですか、あれ結構派手に日付ズレてますよ」
「マジか」
「変わった瞬間書き直してくれてるから、日付はその当日じゃないですか。それが2〜3日ズレてるとかザラだからね」
「そうそう! 日誌もさ、7日と8日を2回繰り返してたり土日が1日に集約されてたり、14日が2日連続だったりしてさ、ヒドいんだよ」
つばちゃんが見せてくれた朝霞クンからの修正版の台本は何枚もあるけど、ことごとく日付の部分がつばちゃんの字で書き直されていた。即日付を書き直さないとどれが先かわからなくなるそうで。
「朝霞クン不健康だから〜」
「まあ、ステージが終わったら戻るだろ」
「朝霞サンそうじゃなくて! ステージやってる時の方が日付感覚大事だから!」
「戸田の言うことにも一理ある。そうか、思ったよりも日付をわかってなかったんだな」
「何か習慣づけるとかすればいいんじゃない? 金曜日はレッドブルじゃなくてリポDにするとか」
「なるほど、考えとく」
そしてさらさらと書き記された今日の日誌には、日付のことを意識するという文言が躍ってたんだけど……
「朝霞サン、日付違う」
「えっ」
「それ、昨日の日付だね〜」
end.
++++
ステージやってるときは日付感覚を大事にしたいけど、それがなくなってしまうほど不健康な生活を送っている朝霞Pなのであった。
まあ、今はステージの話じゃなくて日付感覚の話なので鬼の朝霞Pと言うよりはただの朝霞クン。ザ☆不健康!
洋平ちゃんがギャンブルあんま好きくないっていうのは初めて知った。でも意外と堅実そうだしどこぞの石川さんたちとは違うかw