俺の観点から言うと、テスト期間も稼ぎ時だ。テスト期間はサークルもないし、そもそも3年にもなると履修コマ数もさほど多くない。バイトに充てる時間は普段よりも増える。
まあ、俺の都合はお構いなしで台風だ大雨だっていう悪天候時にも出て来いっていう電話を散々入れられまくって、エラい人にはある程度弾んでいただけませんかねという直談判もした。
金には困っちゃいないが働けるなら働く。雨にも負けず、風にも負けず。東のバカップルにはデザートピザを投げつけたい願望にかられ、西の腐女子の友達には恐る恐るハーフ&ハーフを届け。
「高ピーってホントよく働くよね」
「夏は光熱費と酒代がかさむからな」
「高ピーらしいや」
夏と冬は光熱費のためにバイトをしていると言っても過言ではない。夏はまだ、多少暑くたってビールが美味ければまあ何でも。だから夏は光熱費よりかかさむ酒代。
冬はとにかく暖房だ。こたつに赤外線ヒーター、エアコンなんかもガンガンかける。寒いと動く気力も出やしない。生きるか死ぬか、冬の光熱費は大袈裟ではなくそれを左右する。
俺の働き方には伊東も少し呆れているようだ。伊東は俺みたく光熱費にガンガン金をかけるタイプでも散財するようなタイプでもないが、使うところでは惜しまないタイプだ。
普段はコツコツと貯めているのに、今年だとワールドカップのためにテレビを買い換え、全試合録画できる外付けハードディスクも買い足した。バカとしか言いようがないが、目的が違うだけでやってることに大差はない。
「ほら、俺はテスト期間でもバイトを特別増やしたりはしないからさ」
「お前はサークルがなかろうが定例会に出てたりして何気に予定はあるだろ」
「まあね。でも日中とかも家でクッキー作ってたりするし」
「でもテスト期間だと宮ちゃんはさすがに家にいないよな」
「だね。慧梨夏を起こすのも俺の大事な仕事です」
「俺だったら宮ちゃんから時給でも出してもらわなきゃやってらんねえな、朝から晩まで世話してよ」
家政婦なら時給も発生するだろうが、伊東と宮ちゃんに関してはもうほぼほぼ家族のような感じだ。家族の世話をすんのにどうして時給なんか発生すんだ、というような顔をしやがるからコイツは。
宮ちゃんはほぼ毎日テストが入っているからこの期間中は全くバイトに入っていない。夏は戦争なのにツラい、とほざいているようだがそれは自業自得だろう。今までの積み重ねだ。
「高ピーは今日もこれからバイト?」
「だな。つか他の連中もテストとかで全然人がいねえんだ。俺とバンドマンの先輩と、あと数えるくらいしかいねえとかふざけんなよ」
「言うほど嫌そうな顔でもないね」
「働かねえと酒も飲めねえ。今日はSサイズ作って帰る」
「高ピーのそのブレなさ、好き」
「はいはいどーも。お前もなかなかだけどな」
ナンダカンダ、仕事の名目で原付を走らすのは嫌いじゃない。雨風の強い日はさすがに勘弁してほしいと思うこともあるけど、晴れてるなら問題ない。
「1週間もしたら高ピー外回りでめっちゃ日焼けしてそうだね」
「ナンダカンダ昔から部活も外だったし、夏はそういうモンだって思ってるから問題ねえ」
end.
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そういや最近高崎がエラく空気だったなと思って、今頃の高崎はどうしてんのかしらって考えたらバイトしてた。
高崎のピザ屋にはバンドマン(フリーター)の先輩がいるらしい。あっ、名前今思い出した長谷川さんだった!
いち氏の大事なお仕事は功を奏すのか! うん、慧梨夏はお察しの生活なのでね! まだまだテストがいっぱいだよ!