「ねえりっちゃんこーた、何かノサカの弱み握っとらん?」
またしかし物騒な頼みごとですねヒロさんは。よくよく考えなくてもそれをネタに野坂さんを脅してテスト対策を何とかしようという魂胆でしょう、さすがの薄っぺらさですね。
「野坂の弱みだったら、講義中や休み時間も一緒にいるヒロの方が多く持ってンじャないスかねェー」
「ノサカ鈍いからちょっとやそっとじゃダメージ食らわんのやよ! 何か致命的なヤツちょーだい!」
「致命的なヤツすか……ンなモンがあったら自分が欲しースわ」
「そもそもヒロさんは、野坂さんの弱みを握って何をしようと?」
「そんなんテスト対策に決まっとるやんこーたウザいよ」
「とりあえず今この瞬間私がヒロさんに野坂さんの弱みを教えることはなくなりました」
「あっ今のは愛嬌やん」
やっぱり。そんな空気が私と土田さんを包み、毎度ヒロさんにノートやその他諸々を集られる野坂さんに対しては頑張れえ〜としか言いようがなく。
そもそもヒロさんはお世辞にも真面目とは言えず、ふらりと旅に出て授業をサボることも数知れず。最終的には同じ学部学科で講義もほぼほぼ同じ野坂さんをアテにしてるんですね。
野坂さんは真面目を絵に描いたような人ですし、成績も怪物級のオールS。アテにしたくなる気持ちはわからなくもないですけど、弱みを聞くにしても頼み方ってモノがあるんじゃないですかね。
「でも致命的な弱みって何でしょうね」
「犯罪歴とか、ネットの書き込みとか?」
「野坂さんは犯罪者ではないでしょうし、ネットでのやらかしもそうそうないと思いますけど」
「そーやね、ノサカ引きこもりやしネット社会の歩き方は上手そうやわ」
強いて私が持っている野坂さんの弱みと言えば変態的な性癖ですけど、それをバラしたところで私が悪者にされて社会的に抹殺されるばかりか、野坂さんはイケメンなのでヘタすれば評価が上がる可能性すらあるんですよね。
そもそも致命的な弱みとは。考えれば考えるほど、世間一般的に見る野坂さんという人が遅刻癖以外に大きな欠点のない人間に見えてくるんですよね。顔はいい運動神経もいい人当たりもそこそこいい、さすがのイケメン詐欺だ!
「つーかヒロ、他の友達を当たるんじゃダメなんすスか」
「完璧な方がええやん」
「一理ある」
「納得してどうするんですか土田さん。何はともあれ、脅してノートをもらおうとするその考えを改めた方がいいですよ」
「こーたは他人事やし文系やからそんな無神経なコト言えるんやよ」
「なァーんですってー!? 私だってね、こんなこと言いたくないですけど脅されてノートを渡す気になるかって言ったらなりませんよ! ないならない物として潔く挑むか頼み方をどうにかしなさい!」
文系は文系で大変なんですよ、理系ばかりが大変だとは思わないでいただきたいですね。留年がかかってるとは言いますけど野坂さんが言うには普通にやっていればまず留年しないらしいじゃないですか。
「大体野坂さんは野坂さんで最終的にはヒロさんを助けるんだから甘いんですよ! 何なんですかあのお人好しは!」
「やァー、こーたがイケメンに嫉妬してるぞー」
「何とでも言いなさい!」
「こーたウザいよ」
「それは筋違いです」
end.
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MMP唯一の常識人と言えば神崎なんだけど、今回はそれ故にぷりぷり怒ってるだけの人になってしまった。常識人だからね!
ノサカの弱みって言ったら菜月さんに片想いしてることだと思うんだけど、MMPじゃ圭斗さんとりっちゃんしか気付いてないしなあw
ノサカはネガティブなことを除けば基本パーフェクトみたいな感じ。でも自分のことが大嫌いなんだぜ! 高すぎる理想故に!!