「さて、ひとまず夏合宿はお疲れさまでした。でもMMP的にはまだ夏のイベントがあるね」
「はて。何でしょうか圭斗先輩」
「オープンキャンパスな」
「ああ、それがありました」
向島大学では9月にオープンキャンパスを開催している。俺も高校生の時に来た覚えがある。MMPではそのオープンキャンパスの日に学食で公開番組をやらせてもらっている。
とは言えこれは大学公式の番組ではなくあくまでもMMPが自発的に行っていること。やるもやらないも自由。やるならタケテンに挨拶に行かないといけないし、と圭斗先輩が改まる。
タケテンこと竹尾店長はMMPの活動に好意的な人だ。それというのも1・2年生当時の麻里さんが学食でバイトをされていて、今でもタケテンから頼まれて籍だけは置いているからという説がある。
「ん、やるような雰囲気にはなってるね。菜月さん、今度タケテンに挨拶に行こう。ついでに秋学期の昼放送もよろしくお願いしますという旨を伝えようか」
「そうだな、それがいい。ついでに学食のフェア情報も前取り出来ればいいな」
――ということがツートップの間でまとまったところで話は本筋に戻る。オープンキャンパスの番組だ。それをどんなペアが、どのように作っていくのか。
去年は確かくじ引きでペアを決めていたような気がするから、きっと今年もそうなるだろう。現に、圭斗先輩がオープンキャンパス番組の主旨を説明する裏で、菜月先輩が製図されている。
「さ、ペアを決めるぞ」
「さすが菜月さん、完璧なあみだくじだね」
「あみだに完璧もクソもないだろ。とりあえず、折り曲げてある方にアナ陣の名前が書いてあるから、ミキサー陣4人がどこを引くか決めてくれ」
「わかりました」
菜月先輩からその紙を受け取り、さっそくミキサー陣はその紙に群がった。たまには新鮮な組み合わせがいいなとか、たまにはラクさせてくれるアナさんがいいとか、各々の欲望が渦巻く。
「ところで菜月先輩」
「どうしたりっちゃん」
「もしこのクジで野坂が圭斗先輩と当たったらどーなるンすか? ペア組むの禁止令出てやスよね」
「それは当たったら考える」
とりあえず、さらさらりと場所は決めた。圭斗先輩とはペアを組むことが禁じられているから残る3人のうちの誰かだ。お願いしますから菜月先輩ともう一度組ませてください! 神様仏様圭斗先輩!
てーってってー、と軽快な歌と一緒に、折り曲げられた部分が開かれた。そしてその歌は引き続き開票作業のBGMとなる。てーってってー、てーってってー。字面とは裏腹、そわそわするBGMだ。
「てーってってー、っと。奈々と圭斗。てーってってー、カンザキと三井」
これで2ペアが完成して、残るアナウンサーは菜月先輩とヒロ。残るミキサーは俺と律。くそっ、やっぱり最後まで俺の前に立ちはだかるのはお前たちか!
「ノサカ細かいからボクりっちゃんがええよ」
「や、自分そろそろラクしたいンでぜひ野坂と組ンでくれ」
「何言ってんだ律! そんな邪心だらけで菜月先輩と組めると思ったら大間違いだぞ!」
「生憎こればっかりは運スわ」
「――と言うかヒロ、俺が細かいんじゃなくてお前がいい加減過ぎるだけだというのに何故気付かない」
そしてまたてーってってーと菜月先輩の鼻歌が軽快に響く。それは天国行きか、地獄行きか。
end.
++++
MMPのオープンキャンパスネタ。今回はペアを決めきらないよ! でもノサカの前に立ちはだかるヒロとりっちゃんがな、またラスボスっぽいよね!
タケテンと言うか学食とMMPのつながりについても少し語られました。実は麻里さんというパイプがあったりなかったりするんだぜ
そして圭斗さんとペアを組んではいけないというルールはここでも適用されるらしい。でもそれはノサカが悪いよね、使い物にならなくなるんだから。