「あソレ土・下・座! 土・下・座! あソレ土・下・座!」
「ちょっとあなたたち! ナーニをふざけたことを言ってるんですか!」
「あソレ土・下・座!」
今日も2年生は元気だなあ。思わず視点を遠くしてしまう賑やかさ。神崎の周りで残りの3人がわあわあと手を叩き、煽っている。巻き起こる土下座コールに菜月さんも呆れ顔だ。
事の発端は対策委員からの夏合宿後の報告。お疲れさまでしたとか打ち上げのこと、同録MDについて知らせがあった後、野坂が深刻な顔をして切り出した話だ。
それが、向島を対象にして起こった苦情。厳密には、神崎のいびきと歯軋りがウルサくて寝れなかったというもの。去年からも言われていたことだけど、今年も言われたかと。
野坂は朝方トイレに起きた時に、神崎が原因で眠れなかった子に遭遇したらしい。その子を部屋に帰すのもかわいそうだから対策委員の男子部屋に匿ってあげたとか。賢明な判断だったと思うよ。
「向島っつーかこーたの過失なンで土下座行脚させヤしょうゼ、ハラキリハラキリ」
「いや、大部屋にいながらこーたに猿轡を咬ませなかった律の不手際とも言えるから、向島の責任は大きい」
「マジすか! あー、でも確かにそう考えるとその手間を省いたのは自分も悪かったスわ、せめて濡れ雑巾でも被せときャよかったスわ」
「ホントだな」
「ちょっと野坂さん土田さん、ナニ恐ろしいことを真顔で言ってるんですか」
去年名指しで苦情を受けた野坂は対策委員だったおかげで今回はベッドのある小部屋に自ずと隔離される形になっていた。結果、神崎だけが体のいい的状態。野坂は完全に自分を棚に上げている。
「でもこーたの寝汚さを知ってンのに隔離しなかった対策委員がわりィすわ。向島が2人もいてそれに気付かナイってーのはねェー」
「ボクこーたのコトなんか興味ないから知らんかってんよ」
「あっヒロお前」
「でも実際何人くらいおってんやろ被害者」
「さあ。俺は朝方タカティとミドリに会ったけど、部屋にはもっといただろうな」
「青女以外に土下座に回ることをオススメしヤすぜ」
それまで2年生を呆れた様子で見ていた菜月さんがようやく声を発したと思えば、「割と真面目に土下座行脚に行くことを考えた方がいいかもな、トップも一緒に」なんて恐ろしいことを言ってくれる。
どうして僕が神崎のためなんかに頭を下げなければいけないのかい? いや、普段からも三井のやらかしのおかげで頭は各方面に下げてはいるけれど、それも正直何故僕がという思いでいっぱいだよ。
「や、でも自分タカティには忠告してたンすよ?」
「何て」
「こーたの所為で寝れなくなるから事前に殺すか埋めるかしろって」
「律、そのラブ&ピースを1年生が実行出来るはずないだろ」
「1年生でなくたって常識があれば実行しませんよ」
「いヤ〜? タカティなら出来たと思いやすぜ? ねェ菜月先輩」
「そうだな、高木なら出来たはずだ」
「ナ、ナンダッテー……タカティはラブ&ピースの申し子だったのか…!」
「あんな大人しそうな子が人に手をかけるはずがないでしょう。目を覚ましなさい」
結局、夏合宿の全体打ち上げなど、インターフェイスの集まりがあった際に神崎がその場で土下座をするということに落ち着いた。向島全体の過失ということにならなくてよかった。
――と言うか、菜月さんはトップも頭を下げろって言ったけど、去年も同じような苦情をもらっていたならそれを今年の対策に助言しなかった彼女の過失にもならないかい? なんてね。
end.
++++
冒頭の土下座コールがやりたかっただけです。ノサヒロ律がきゃっきゃと神崎を煽っているよ! ノサカ……一歩間違えばあっち側だったのにw
向島のラブ&ピースが物騒なのは今に始まったことでもないからね……しかし今回はどこからの苦情だったんだろうか。
と言うかラブ&ピースの申し子がまさかの緑ヶ丘にwww でも夏合宿4班は菜月さんとりっちゃんというエースがいるからなあ、仕方ない