夏合宿が終わってやることと言えば、向島大学理系2年の運命を分かつ成績の確認だろう。本当は合宿の期間中に開示されてるんだけど、さすがに合宿中は成績のことを気にする余裕はなかった。
ヒロを連れ、本当は家でも見ることの出来るそれをわざわざ大学にまで出てきて見ることの意味だ。お前もそろそろ現実見といた方がいいんじゃないかと突きつけてやることがいかに大事か。
「ねえノサカホンマ意味わからんのやけど、何で合宿終わって休みになったんに大学出てこんといけんのホンマ意味わからんよ」
「ほーう、取れてる単位数もわからずに秋学期の履修を決めれるのかお前は。ほーう、すごいなーさすがヒロだ」
「ノサカそーゆー意地の悪いコトゆっとったら調子乗っとるって言われるよ」
「何とでも言え」
大体、仮に俺が調子に乗っているとして。いや、乗っていないのだけど、百歩譲って調子に乗っているとしてもそれ以上に浮ついているのはお前だろうと言いたい。
どう天地がひっくり返っても俺の方が危機的状況に陥ることなどまずあり得ないのだから。仮にいろんな意味で目を疑うような成績が出ていよう物なら学生課に訴えることも辞さない。
「えーっと、sakuma.hiroーっと」
「nosaka.masafumiーっと」
「ねえノサカパスワード忘れた」
「学籍番号忘れるとかお前どうかしてるぞ」
「しばらく入らんとどーもアカンね」
「そういう問題じゃないだろ」
まさかそこからか。学生システムにログインするところから手ほどきをしてやらなければならないとまでは思わなかった。しばらく入らないと、とか言うけどテスト期間中はイヤになるほど入ってただろうに。
「ノサカ成績どーやって見るん?」
「この画面のここを押して、ほら」
「うわっキモっ! 何なんこの成績! どーかしとるよSばっかりやん!」
「普通にやってたら取れるだろ」
「ノサカいつから自分が普通やと思っとったん!? ゆっとくけどノサカ普通やないからね」
やれ人の成績に文句ばかり付けてくるクセに、自分の成績を一向に確認しようとしないのは何なんだ。俺の成績を確認する会じゃないんだぞ。お前がいかに酷いか自覚してもらう会じゃないか。
「ヒロ、いい加減覚悟を決めろ」
「何でノサカに見られなアカンの」
「ほーう、じゃあ、お前は俺の事情抜きで秋学期の履修を考えられるんだな。それはよかったよかった」
「あっそれはアカン」
そう、俺とある程度講義を揃えておかなければ、いざと言うときに困るのは自分だ。いや、理系の序盤は必修が多くて授業は必然的にカブってくる物だけど。
俺は一言も課題やテスト前に助けるとは言ってないのだけど、ヒロは端から俺に集る気マンマンなのだからそれを利用させてもらって動かしやすくするだけのこと。
「アカン! また必修落としとる!」
「はい残念、来年やり直しだな」
「何でノサカが受かってボク受からんの!」
「日頃の行いだろ」
「賄賂送っとるやろノサカ!」
「ヒロ、そういうのの積み重ねで助けが得られなくなることを覚えといた方がいい」
暴言の積み重ねにしても、単位が取れなかったことの積み重ねにしても。俺が普通に講義を受けているのも決してヒロのためではないのだから。得たければ与えよ。与えなくてもいいけど、奪うなと。
「ま、精々留年しないように頑張りたまえ」
「ノサカも留年してしまえばええんやよ!」
「残念、俺はこの時点で無事進級が確定した」
「鬼! イケズ!」
end.
++++
相変わらずヒロがぎゃあぎゃあとノサカにあることないこと喚く回。成績開示はいつもこんな感じになるよね。
最近のノサヒロは、ノサカはこんだけヒロに酷い目に遭わされててよく絶縁してないなってレベルよね。
きっと春頃にもまた似たような話をやるんだろうなとは思うけど、その頃にはもっとひいこら言ってるんだろうなあ、留年かかってるしw