バイクで走って30分。
5階建てのマンションが、桐島の家だった。
「湯野、着いた」
だから腕、放して。
淡々とした口調にハッと我に返った湯野は、慌ててぱっと桐島の腰に固く回した腕を外した。
黙々とバイクを止める彼を見ながら、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
バイクの後ろは鳴海で慣れていると思っていた。
だがやはり運転の仕方というのは個人差があるのだ。
「…湯野、あんたさ」
ヘルメットを外した桐島が呆れた顔で小さく溜息を吐く。
湯野はくしゃくしゃになった髪を直せないまま、彼の差し出した腕へ凭れ込んだ。
「酔ったんでしょ」
「面目ない……」
すとんと地面に降ろされ、抱えていた荷物を奪われる。
青褪めているだろう顔を上げると、桐島はぶっきらぼうに湯野の腕を掴んだ。
「うち、三階だから」
階段くらい頑張ってよ。
支えてくれる腕が温かい。
湯野は彼の不器用な優しさに小さく笑った。
可愛いとこもあるじゃん。
「おーけー。頑張る」
桐島の頬が、仄かに赤かったのは気のせいだと思おう。
桐島と書かれた表札の向こうは、はっきり言って物が無かった。
手狭な玄関にはローファーとサンダルがきちんと靴立てに並んでいる。
傘立てには二本のビニル傘。
2LDKの、だがけして狭くはない部屋。
小さな机に三人掛けのソファ。
フローリングの床に埃は無く、炊事場も綺麗に片付いている。
否、そもそも物がないせいもあるだろうが。
「こっち、寝室」
しばらく寝てなよ。
そう言われて、ベッドへ促された。
一瞬、さすがに躊躇したが柔らかそうな毛布の誘惑に負けてそっと横たわる。
枕やシーツの至る所に桐島の香りは染み付いており、翌日目覚めたら、きっと自分も同じ匂いがするのだろう。
あの頃と同じように。
脳裏に浮かんだ面影から目を背けるように、湯野は目を閉じた。
都合良い言い訳だと、解っていた。
馬鹿らしい意地だと、知っていた。
けれども、あの時。
自分はどうしようもなく、まだ子供で。
これ以上、彼を傷付けたくない気持ちだけが、先立って。
――ああ、自分はまた。
「逃げるんだな、あたしは」
鳴海と同じ香水が、ふわりとゆるやかに毛布から馨る。
ぱたぱたと部屋の向こうで響く微かな足音に、湯野はそっと唇を噛み締めた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
久し振りに第4話…かな?←
更新です!(^^)
湯野たんは時々、タローに鳴海を重ねて見ちゃうっていうのを書きたかったんですが、上手く表現出来ないわたしが歯痒い。←
次回からはずっとタロー視点かも知れません。←
視点交替ってのも楽しいなって思ったんですが、今のスランプ海溝まっしぐらなわたしにはキツかった……。
絞り出すように書いてますアッハッハッ(^▽^*)←
そんなこんなでプロフ!
藍原 詩帆(あいはら しほ)
高一。
一時期、相模に関するすべての記憶を無くして、貴巳と付き合っていたが、記憶が戻って復縁。
基本的家事はすべて得意な彼等の中でお嫁にしたいキャラNo.1。
ほのぼの天然な割に結構毒舌。
飯田 紗織(いいだ さおり)
高一。
藍原の親友。川橋の恋人。
女王様気質で高いプライドの持ち主。
の割にツンデレで川橋には滅法弱い。
夏と一緒に藍原の世話を焼くのが日々の癖になりつつある。
つまり、何だかんだで優しい姐御肌。
湯野 加那(ゆの かな)
高一。
定時制から凌達の通う高校に途中編入した。
変人電波キャラの裏は意外に芯の通った女の子。
以前、鳴海と好きになったら負けをルールに交際していたが、自分から終わりを告げる。
中学時代に好きだった沢田と付き合うも、別れる。
今は鳴海に気持ちが揺れている。
ちょっと文字数の関係でここまで!←
湯野たんのプロフが長いのは愛情の差ですともえぇ!←
次に更新する時は最後まで行けたらいいな…。←結局希望的なね。
明日は八時間ん〜´`
あれ、ちょ、今週通し多くない?店長さん…。
目指せ☆給料9万円!
とりあえず25日まで残金800円で頑張ります…。←おい
おやすみなさいませ、ご主人さま!←壊