※ユタカさんとのコラボ?リレーです。
偽物、駄文、要注意!
ゲツヤさん視点の素敵なお話を読みたいかたはリンクからじゅーぜんぐさへ(^ω^)
いくぜ俺のターン!←言いたかっただけ。
時計を見たら、もう23時を半ば過ぎたところだった。
食べ終わった食器も片付けて、あとは寝るだけとなったのだけれど。
「……どうするべきか」
一応、来客用として布団は一組あるのだけれど、ベッドを譲るべきか否か。
来客用の布団はしばらく干していないし、自分のベッドは本当に女として産まれたことが申し訳なくなるほど、ところ狭しと物が転がっている。
片付ければいい話なのだが、眠気がピークに達しており、やる気にもならない。
悩むだけ無駄と決断を下したあたしは、座椅子で長身な身体を器用に丸めたゲツヤを振り返った。
「ゲツヤー」
「なあに? ユノー」
「ユノーじゃなくてゆ・の!お布団、隣に敷いてくるからもうちょい待って」
たった数時間ですっかり言い慣れてしまった科白にげんなりとしつつ、あたしは隣室へと足を向ける。
が、それが叶うことはなかった。
「‥‥げっつん」
「なあに? ユノー」
「手、離してくれるかな?」
「どうして?」
眠たいのかゆっくりとまばたきをひとつして、ゲツヤは小さな子どもみたいに聞き返す。
あたしはもう、何だか泣きたくなってしまった。
綺麗な顔に弱い自分が情けない。
そして、変なアダ名返し作戦、失敗。
「どうしてって…もしかしなくても一緒に寝るつもりかこのやろー」
「だめなの?」
「…………」
無理。勝てない。
この捨てられた子猫のような愛らしい眼差しに勝つ自信もない。
あたしは、小さなため息をひとつして。
「‥‥解ったよ、もー…」
そう言った時のゲツヤはとても、とっても嬉しそうににこにこしていた。
「いい?このうさぎさんクッションからこっちは絶対に入っちゃだめだからね?」
ベッドと敷布団の境目にうさぎクッションを置いて、あたしは小さな子どもに言い聞かせるような口調でゲツヤに厳命した。
ゲツヤは神妙な顔でこっくりと頷いて、もぞもぞとふかふかの毛布に潜り込む。
そして、心地良さそうに掛け布団に頬を埋めたのを見て、あたしはにやりとしてしまった。
あたしは布団だけはこだわりたくて、掛け布団も毛布ももこもこの肌触りの良い布団を買った。
しかもこんなに可愛いのに、二つ合わせて三千円なのだから素晴らしい。
ありがとう、ニトリ。
「ねえ、ユノー」
「んー? なあに?」
部屋の照明灯を豆電球に切り替えた時、ゲツヤがほんのり微睡みかけた声音であたしを呼んだ。
もう訂正する気にもならなくて、 返事を返すと細い手首と骨張った大きな手がベッドの縁に現れた。
「手、つなご?」
細いのに、男の子なんだと実感する手があたしの手を探して揺らめく。
あたしは仄かに笑って、その手をきゅっと握り締めた。
「ん、いーよ」
「ユノーの手は働き者の手だね」
少し下の段差でゲツヤは笑った。
あたしの手を撫でる彼はまるで子猫がじゃれついているように見える。
あたしはとろとろと穏やかな眠気に身を委ねながら、その様を見つめていた。
「なんで働き者なの?」
「六とおんなじ手だから」
訊ねると、ゲツヤはとても穏やかな微笑を浮かべた。
ロクって誰だろう。明日、また聞いてみよう。
ゲツヤの手が温かいからか、なんだかとても落ち着く。
気がつくとあたしの口許は、ふんにゃりと笑っていた。
「ねー、ゲツヤ」
「なあに? ユノー」
ベッドの際まで寄って、あたしは手を伸ばしてゲツヤの頭を撫でた。
温かいゲツヤの手をぎゅっと握り締めて、優しくさらさらの髪を撫でてやる。
ゲツヤは変なやつ。
だけどきっと、ものすごく、ものすごく、優しくて、優しくて、寂しいやつ。
寂しいのは、あたしも一緒だけど。
だからこそきっと、こんなにも安心してしまうのだろう。
ユノーは。なにも言わなかった、
なんだか泣きそうな。寂しそうな、
そんな顔でわらいながら眠ってた、
ユノーの手はあったかい、
おれの手も。
だからもう聞こえないってわかってたけど、
「おやすみ。ユノー」