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大人への階段 11

ーー困惑


優子side



『ゆーこー』
『小嶋さん飲み過ぎじゃない?』
『いいの』



いんだもん。いっぱい飲むの〜
って珍しくお酒を離さない小嶋さん
仕事が終わり予定通りお家にお呼ばれしたんだけど、確かに部屋はいつもより片付いていた
って言っても、雑誌や服を隅っこにまとめましたって感じがにゃんにゃんらしい



『なんもわかってないんだ』
『ん?なに?』
『優ちゃんなにもわかってない』
『にゃんにゃん。大丈夫?』



こんな酔ってるにゃんにゃんは見ないからほんとにちょっと心配でお水をあげてみる



『むぅ…』



なにが面白くないのか、あげたお水は突き返されて結局あたしが飲む羽目になってしまったけど



『優ちゃん優ちゃん』
『ん?』
『泊まっていきなよ』
『あーはは。麻里ちゃんと約束しちゃったし、ね?』
『…ばーか』



お酒をやっと離したと思ったらハイハイしながらどこかに向かう


行き着いた先は…あたしの真後ろ


背中から思いっきりぎゅうってされてお酒のせいなのかいつもより高い体温とちょっと乱れた息遣い



(ねえ、陽菜のお願い聞けないの?)



ぞわっとする
こんな風に耳元で女の子の甘い声が響いてしまえば
いや、小嶋さんの甘い声が響いてしまえば



『優ちゃんは陽菜のこと嫌い?』
『え?いや、まさか』
『じゃあ好き?』
『えっと…どうしたのほんとに?』
『陽菜は質問してるの〜』



首筋にぐっと顔を押し付けられるのをわかってしまった
心臓が、もたない

どくんどくん脈打つ音が次第に大きくなっているのだって自覚している



『答えて?』



一言だけ言ってにゃんにゃんは黙ってしまった
これって、好きか嫌いかしかないじゃんか…
なんてずるい質問なんだと後ろの小悪魔を責めたっていいぐらいに



『…嫌いなわけないじゃん』
『……』
『だから、好きだよ?にゃんにゃん?』
『……』
『おーい』



やっぱり今日の小嶋さんはどこか変な気がする
あたしがにゃんにゃんを好きなんて今に始まったことじゃないし、改まって聞かれたら、ほら、こんな空気になるじゃんか



いつまでも緩まない腕の力に困ってしまい、後ろを振り向いた



『にゃんにゃん?』
『…ん』



今にも泣き出しそうな潤んだ瞳はあたしを捕らえるには十分で


一瞬足りとも、目をそらすことが出来ない
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大人への階段 10

ーー変化


麻里子side


焦りがない、なんて言ったら嘘になるけど
自信がない、と言っても嘘になる
ライバルはニャロ。脈無し?いやいやこれからが勝負でしょ



『優子』
『なーにー』
『今夜ひま?』
『今日はにゃんにゃんにご飯に誘われたんだー』
『…ほう』



やっぱり、焦ったほうがいいかも


(行動が早いな…)


いつもスローペースのニャロだけど優子となると話は別みたい
そのスピード感を仕事に回せばいいんじゃないかな?



『麻里ちゃんもくる?』



篠田の天使・ゆっぴー
篠田に聞くその顔に純粋さ以外無し



『んー、ニャロ泊まり?』
『違うよー』
『じゃあさ、うちこない?飲み直そうよ』
『明日早くないの?』
『それなり、だから大丈夫』



8時起き。ぜんっぜん余裕
ゆっぴーとの愛を育むのに睡眠時間なんていくらでも削りますとも。ええ



『じゃーにゃんにゃんには遅くなりすぎないように言っとくね』
『うん。楽しみだなー』
『あはっ麻里ちゃん最近あたし好きだね』



お、っと。どきってするからやめてほしい
そんな可愛い笑顔で言われたら大真面目に好きだよっていいそうになるじゃないか


にゃんにゃんに麻里ちゃんにあたしモテモテで困っちゃう〜
って笑う天使ちゃん



『あ、そうだ。どうせなら泊まってかない?』
『え?麻里ちゃん家?』
『うんうん。お酒飲むし、泊まってっちゃいなよ』



むしろ、ぜひ。



『なんのはなしー』



(びくっ)



でも、後ろから聞こえた間延びした甘い声に恐怖心さえ感じてしまった



『にゃんにゃーん撮影終わったの?』
『終わったー。ねー』



なんの話してたの?優ちゃん。


ねえ、ニャロ、それずるくない?
ゆっぴーの腰を抱きしめるように引き寄せて首をかしげて
優ちゃんって甘い声出して
女をふんだんに使って落とす気満々じゃんか



『あはっにゃんにゃん今日も可愛い〜』



ほら、おかげでさっきまで篠田に見せていた可愛い笑顔は全部ニャロに向けられちゃったじゃないか



『今日にゃんにゃんとご飯食べた後、麻里ちゃん家いくんだ』
『え?優ちゃん陽菜の家泊まらないの?』
『へ?』
『え、ちょっとニャロ…』
『だってご飯って陽菜の家でしょ?』
『そうだっけ?』
『言ったじゃんかー。今日は優子来ると思ってたから昨日片付けした』



おいおいおい。
なんだか話がニャロのペースに持ち込まれてるような…



『んー。あーでもあたし今日は麻里ちゃん家泊まるかな』



……え?
いま、なんて、



『ごめんねにゃんにゃん』
『…ん、わかった』



驚いて、泣きそうな顔になった後ニャロは拗ねたように顔を伏せた



『仕事、終わったら連絡して?』
『はーい』



次に上げた顔は笑顔に変わっていてさすがだな、って思うけど



『麻里ちゃん、てことで今夜お邪魔します』
『あ、うん。うん』



優子の気持ちがどんどんわからなくなっていく
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大人への階段 9

ーー複雑な思い


優子side



『おっはー!おっはー!』
『おはようございます!』



うんうん。いい挨拶だ。可愛い後輩たちから元気な挨拶が返ってくると一日の始まりは気分がいい


空いてるスペースに荷物をおいてっと


ん??
つんつん、と服を引っ張られるなーと思ったら



『優ちゃん、おはよ』
『お!にゃんにゃんおはよ!』



振り返るとAKBの姫、小嶋陽菜がこれまた美しい笑顔であたしに微笑んでいたんだから、やっぱり今日は最高の日になるに違いない



『この間、楽しかったね』
『あたし寝てばっかだったよね?ごめんねー』
『ううん。疲れてるのに陽菜たちが押しかけたから』



ちょっと申し訳なさそうな顔をした後、でも元気出たでしょ?って



『ありがとうね。心配してくれて』



あの日、麻里ちゃんとにゃんにゃんの押しかけお泊まり会の理由を次の日の朝に聞いたあたし



(ゆっぴー最近悩んでたでしょ)
(え?)
(だめだよ?優ちゃんは我慢強すぎるんだから)
(…うん。ありがとう)



思い出すと今でも心がほっこりする
悩みの原因を聞かれるかと思ったけど2人は何も聞かなかった
詮索するわけでもなく、きついなって思ったときそばにいてくれる仲間


失いたくないな、って思った


同時にあたしの悩みを吐き出すことはもっと出来なくなってしまったけれど



(言えないよな、やっぱり)



とりあえず、いいかなって
まだあたしは我慢できる

伝えることだけが全てじゃないことだって世の中あるはずだから



『にゃんにゃん』
『んー』
『三人、いつまでも仲良しでいたいね』
『…うん』
『え?いや?』
『うーん。もっと深い仲になれたらいいね?』
『あは!もっちろん!』



大丈夫だよ。にゃんにゃん
こうやって思い出を重ねて素敵な絆を作り上げていこう


《友情》っていう絆を
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大人への階段 8

ーー恋の駆け引き



陽菜side


別に
抜け駆けしないで、とか
ずるい、とか
卑怯者、とか


そんなこと言わない。思わない


だって、陽菜が同じ状況でも手を出していたかも知れないもん



『ニャロ、は…陽菜の好きな人ってさ。やっぱり優子?』


どこか不安げに困ったような顔で陽菜を見る麻里子



『わかってなかった?』
『半信半疑だったかな。友達としてかなって思ってる部分もあった』



そうだよ。だって陽菜はあからさまに《好き》って気持ちを出さないもん


もう麻里ちゃんにはばれちゃったから隠す必要もないけど



『気づいたらね?好きだった。そばにいてほしいって思うようになってたの』



話だしたら気持ちが止まらなくなりそうで、陽菜は一回会話を止める
溢れ出しそうな思いは伝える人が違うと思うし



『…そっか』



一言だけつぶやいて麻里ちゃんも黙る
たぶん、お互いに、必死。


疑惑のポーカーフェイス
なんて言われてるけど余裕なんてなさそうでそれぐらい優子を好きなんだなってわかってしまって胸がざわざわして仕方ない



『守りたいって思うんだ』



優子の頭にそっと触れながら話すの



『私がこの子を包んであげたい』



優しい眼差しを向けて優子に触れるから、ざわざわが大きくなって、本当ならやめてって手を払いたいのにできない


だって、わかるの
麻里子みたいな大人の女性に勝つためには陽菜だって本気を出さないといけないって。本能が騒ぐの



『陽菜は…陽菜だって優子のこと支えてあげたいから』
『できるの?ニャロに』
『できる。じゃないとこんな状況になってないって麻里ちゃんだってわかるでしょ』
『…陽菜、しっかりしたね。大人になったね』



そうだよ。陽菜だって好きな人のために本気になれるようになったの
だから一歩も譲るつもりなんてない
ちゃんとこの人に立ち向かえるよう、子どもっぽい恋愛なんてするつもりなんてない



『…んう、』



あ、起きちゃう
2人の会話がうるさかったかな?
優子の目がゆるゆると開いた



『…んあ。あ、れ…?』
『起きた?ごめんねうるさかった?』
『んーん。あたし寝てたあ?ごめんね?』



優子は体を起こす
自分が下着だって気づいたら、また脱いでたー?なんて呑気なこと言っちゃってさ



『麻里ちゃんもにゃんにゃんもなにしてたの?』
『ゆっぴー鑑賞会、かな?』
『いやーん。いやらしいことしないでよー?』



なにも知らないで言うんだから…
へらへら笑いながら空気を凍らせてるのわかってよ、もーばかばか



『優ちゃん、お布団ある?』
『お布団?』
『うん。陽菜と麻里ちゃん一緒に寝るからお布団』
『ん、えっ。2人で寝るの?あたし1人?』
『優ちゃんのベッドだし。疲れてるでしょ』



眉毛をすごく下げて寂しそうに陽菜を見る
うっ…そんな顔で見ないで
仕方ないじゃん。麻里ちゃんの気持ちを知っちゃって一緒に寝かすほど陽菜はばかじゃない



『篠田と2人で寝るって手もあるよゆっぴー』



なのにこの変態はまた変なことを言い出すから思いっきり睨んどいた



『んー三人で寝る…』
『狭いよ』
『くっつけばいいもん』
『でも、うん。でもね?』
『にゃんにゃん、あたしと寝るのいや?』



えっ…
な、わけないじゃん!



『嫌なら麻里ちゃん真ん中にしよ』



優子の爆弾発言に心臓が止まるかと思った
麻里ちゃんを見ると同じように固まってる
なんてこと言い出すのこの子は



『…そう、する?』
『だめ!!それなら陽菜真ん中』
『いやいや、篠田が真ん中になるよ』
『ほんっと、無理。優ちゃん陽菜は優ちゃんと寝たくないとか思ってないから』
『…ほんと?』



もーどうすれって言うの
そんな泣きそうな顔されたら諦めて三人で寝るしかないじゃん


てか必死な自分に笑えてくる
もーだめだ。陽菜ははまっちゃってるんだ



『にゃんにゃんと麻里ちゃんと寝る』



結局その日、陽菜と麻里子はほとんど寝付けなかったと思う
口論の末、優子が真ん中になったから優子が寝返りを打つたびに心臓が跳ねておかしくなりそうになる
ほんっとにお願いして服はきてもらったけど



『ニャロずるい』



隙を見て密かに優ちゃんを抱きしめたら麻里ちゃんが不満そうに優子の背中にぴったりくっつく



『ちゅうしたくせに。ばーか』
『ははっ。恋はスピード感大事ですから』
『負けないからね。陽菜』
『…私の台詞ね』




やっかいな人、ライバルだなあ
優子の体に密かに触る変態美人を監視するのに気を抜けない一夜だった

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大人への階段 7

ーー衝突


麻里子side


『麻里…ちゃん?』



どこか、困惑を含んでいるようなニャロの声が聞こえた



『ああニャロ。ゆっぴー寝ちゃったよ。やっぱり疲れてたんだね』
『…うん。ねえ、何してる?』



お風呂から上がった陽菜がいた
目を見開いて固まっているようにこっちを見つめている
そんな、不審者を見るような目で見なくてもいいじゃない



『…なんだろう。優子あれから寝ちゃってさ、ベッドに移動させたんだけど』
『…うん』
『見てたら寝顔が幼いなーって思って』
『…うん』
『でも下着だったし、いやらしいなーって思って』
『…変態』
『ははっ。可愛いな。ぎゅってしたいなってなって』
『……』
『まあ、今がある』



そう。今がある
ベッドで寝ている優子の上に私は覆いかぶさっていた
ニャロに見られてからはさすがに上半身を起こして馬乗り状態だけど



『……キス、した?』



篠田を鋭く見つめるニャロ
状況が理解できたのか困惑した声から怒りを含んだような声に変わった気がする



『してないよ?』
『うそ。してた、よね』
『……』
『…麻里子は優子のこと好きなの?』



会話が成り立たないのはご愛嬌
質問責めにされる状況を作ったのは自分なわけで、逃げるつもりもないけれど



『好き、って言ったら?』



最初から
ぶつかるつもりでいたわけだし


『…はあ』



ベッドに近づいてきたニャロは降りなよ。と言いながら私を優子から引き剥がす
不機嫌です。言わなくてもわかるぐらいむすっとした顔をして



『寝込みを襲うとか悪趣味』
『襲ってたわけじゃないよ』
『襲ってるでしょ?』



別に、無理やりに抱こうとかそんなことを思ってたわけじゃない
ただ、



『…たぶんさ、自分でもいま気づいたんだけど。我慢できなくなっちゃうぐらい好きみたいなんだよね。優子が』



ほんとに、それだけ。



『……』



黙ってしまったニャロ。美人に見つめられるのは決して悪い気はしないけど
もう一つ言えば、お風呂上がりの色気たっぷりのこの子に見つめられて悪い気なんて起こるはずもないけど


でも、できればもう少し穏やかな顔が見たかったかも知れない



『あのさ、』



沈黙はやっぱりニャロに破られた



『それって、陽菜に勝つ気でいるってことでしょ?』



そう言って
優子の体を隠すように落ちていた服を優子にかけた
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