ーーこの落ち着かない気持ち、久しぶり



優子side




ぱっと目が覚める
時計はまだ5時を少しすぎた頃だった




『トイレ...』



昼間の蒸し暑さは流石に無いけれど、やっぱり真夏
5時と言っても暑いは、暑いな。
トイレの便座に座りながら、携帯を開いた





(優ちゃん!久しぶり。陽菜お姉ちゃんだよー(бвб)今年、帰るんだけど優子に会えるかな?)




『変な絵文字ー』



昔からあの人が好きだったこの絵文字
唇がBの所なんて、自分をすごくわかっていると思う
まあ、何をやらせても可愛い人だ
こんな絵文字、よくも思いつく





トイレから出た私は、冷蔵庫を開ける
冷えたお茶を喉に流し込むと、暑い体をその一瞬だけ冷やしてくれた




(結局、返信してないや)




既読無視ってやつ
私はそんな事基本的にしない
いや、そんなこともないか
興味のない人や、めんどくさい事はやっぱりやるかもしれない
でも、あの人からのラインなんていつもすぐに返していた




『んーーー』




はあ。
ため息を一つ
あと4時間もしたらこっちに着くのを知っていた
あっちゃんが朝一の飛行機でくるって、と教えてくれたからだ
空港から実家に着くのはまあ、1時間以内だろう
そう考えると、心がざわざわしてきて落ち着かない気持ちになる
なんせ返信もしていないし





『やめた。寝よ』




考えたって、あの人が帰ってくる事実変わらないし、私が返信をしていない事実も変わらなかった
とりあえず、頭を休めて再びベットに戻る事にしよう





*******





そう、これが早朝の話
わかって欲しいのは私は酷く緊張していたって事なんだけど




(ピンポーン、ピンポーン)




『ゆーこ、出てー』
『...ああ、うん』




母に頼まれて、ソファに座っていた私は重い腰を上げる
時刻は13時。




『...はい』
『あ、陽菜です。...優子かな?』
『.....開けるね』





久しぶりに彼女を見るのはカメラモニター越しだった
心臓がどきどきしている
この扉を開けたら、





(ガチャ)




ばっちりと目が合う





『優子。久しぶりだね』





久しぶりに聞いたこの声
ああ、本当に目の前に彼女がいる

とても柔らかく優しいその笑顔は昔と変わっていなかった
むしろ、もっともっと大人びていて、一瞬で心を奪われていく自分に気づいてしまった





『....』
『おーい、優子?』
『あ、うん。久しぶり。え、っと、はい。入って?どうぞ』
『うん。お邪魔します。わー、久しぶりだ。大島家ー』




間延びした話し方もやっぱり変わっていなかった