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先生とあたし 13

−−こんな火曜日


優子side



『今日放課後空いてる?』



今日は火曜日の放課後
いつもならあたしが保健室にいくの知ってるはずなのにあっちゃんにそんなことを聞かれた



『あー放課後か』
『空けてほしい』
『ん、わかった!』



あっちゃんと遊ぶなんて久しぶりだし今日は仕方ないとするか
小嶋先生にはお昼に会ったわけだし少しぐらい我慢するんだあたし!


ってことであたしの部屋に久々にあっちゃんがいる



『なにするー?あっちゃんゲームやんないよね』
『やんない』
『じゃあDVDでも見る?』
『いいよ優子。今日はそうゆうのいいの』



そうゆうのってどうゆうの?
帰り道を歩きながら映画の話しをしてたしこの流れはDVDかななんて思ってたんだけど



『優子こっちきて』



あっちゃんが横の床をぽんぽんって叩くからあたしはあっちゃんの隣に座った



『小嶋先生と最近どう?』
『え!小嶋先生のはなし〜?』



なんだあたしの恋愛相談にのってくれるなんてそんな!にやけちゃうよ



『うふっ毎日かわいい』
『すきだよね』
『だいすきだね』
『…あたしも』
『あっちゃんも小嶋先生すき?こらーあたしのだぞっ』



あっちゃんがすきなんて初耳だなー
タイプには見えないけど小嶋先生は魅力に溢れてるもんな!



『すきだよ』
『え?ライバル?』
『優子』
『ほい?』
『あたし優子がすきだよ』
『……え』



いきなり握られた左手
あたしの方を向いたあっちゃんの顔は冗談には見えない



『ほんと?』
『ねえ、ちょっとも自覚ないわけ?ずっと好きだったんだけど』
『いつから?』
『一年生』
『う、そ…』



一年生ってあたし彼女いたし
てかまだあっちゃんとそんなに仲良くなくない?
あの頃は確かここまで仲良しな友達じゃなかった



『好き。優子がだいすき。あたし小嶋先生に負けないよ。誰よりも好きな自信ある』



握られた左手は絡むように繋がれる
もう片方の腕があたしの腰に伸びてぎゅってされてあたしの顔の横であっちゃんが喋る



『あたしじゃだめかな』
『あっちゃんは、ごめん友達としか見たことなかった…』
『じゃあこれから見て。恋愛対象として見て。優子がだいすきなの。ずっとずっとそばにいたい』



2人の距離がもっと近くなるからあっちゃんの心臓の音が聞こえる
嘘じゃないってこの音が教えてくれる



『あたし、好きな人がいる』
『小嶋先生でしょ?』
『うん』
『やだよ。やだ』



やだやだ言う声が涙声なのがわかってしまった
泣かせたくないなあ



『ごめん。あっちゃん』
『ずるいよ…優子のことずっと見てきたのに。小嶋先生ずるい』
『いや、あたしが一方的だし』
『一方的でいいの?』



じっと見られた目には涙が溢れてるのがわかる



『いやだから頑張ってるんだ』
『報われないかも』
『つらいね…』
『それでもいいの?』
『いいよ。こんな気持ちのままあっちゃんの気持ちに答えちゃうより』



だから…優子やだ
うーぅ


あたしの肩をぼんぼん叩きながらやっぱり泣かせてしまった



『ほんとごめん。でも嬉しいよありがとう』
『ふっう、すき』
『うん。ありがとう』
『うぅっひく』



抱きしめるのも違う気がして
突き放すのも違う気がした
なにもできないあたしはただひたすらあっちゃんの気の済むまでこうしているほかなかった



先生とあたし 12

−−ある日の放課後


陽菜side



『あれ』



今日は火曜日の放課後じゃないから陽菜はさっさと帰ろうと思ってた



『いま大丈夫ですか?』



保健室のドアを開けたのが大島さん意外なのは久しぶりでなんだか違和感
それも変な話なんだけど



『どうかした?』
『少し先生と話しがしたくて』



そう言ったのはあっちゃん。たぶん
だって大島さんがよく言ってるから
まりちゃんのほうじゃないと思う



『いいよ。えーっと』
『前田敦子です』
『前田さんね』



座ったら?と言ったけど前田さんは首を振ってすぐに終わるんでって


今さら思うけどこれが生徒と教師の距離だよね
敬語とかテンションとか
礼儀正しいなあって思うのは大島優子に慣れちゃったからかな



『小嶋先生は優子のことどうゆう風に見てるんですか?』



ほんとにストレート
そこ意外の話題なんて考えられなかったからなんとなく心構えはしてたけど



『どうって。一番仲良しな生徒かな』
『それだけですか?』
『うーん』
『ほかになにかあるんですか?』



少し特徴的な声はきっと笑うとかわいいんだろうな
陽菜を見つめる真剣な目も柔らかくなるときがあるんだろうな



『あたし、優子が好きなんです』



大島さんの前ではきっと



『ずっとずっと好きなんです。高一のときは入学したときすでに優子に彼女がいて、でも惹かれちゃってる自分に気づいちゃって』
『……』
『気づいたらすごい好きで、優子が別れるたびにあたしにチャンスがきたかなってほんとに嬉しくて』
『……』
『ついこの間のだってあたし最低だけど嬉しかったの。ちゃんと言おうって、卒業前に気持ち伝えたいって思ってた』



ほんとに、ほんとに好きなんだ
さっきまでの強い瞳が切ない瞳に変わるから陽菜まで胸がきゅって締め付けられる



『でも、先生が来た。小嶋先生小嶋先生って毎日言うんだもん。あたし、だめなんだなーって。優子に好きになってもらえない…』



頬を流れるその涙はきっと陽菜が見ていいものじゃないのに



『でも好きだから。すんごい好きだから。優子が好きってすぐに言えない小嶋先生になんか渡したくないんです』
『……』
『あたしのほうが優子をいっぱい知ってるもん。先生なんかなんも知らないじゃん…』



そうだ、ね。
でもね前田さん、陽菜はこれからたくさん知りたいって思ってた
昔の大島さんだってできれば本人の口から聞きたかったなって思っちゃってるぐらいなんだ



『うっ、ひくっ…やだ。優子取らないでよっ』



さっきまでの強さはどこにもなくて陽菜の目の前にいるのは恋するひとりの女の子


陽菜は、
陽菜はこんな風に大島さんのために泣けるのかな



『うぅーあ…中途半端な先生にはあたし負けないんでっ』



最後の一言はしっかり陽菜の目を捉えてた



『ああ…』



妙な解放感に体をがくっと机に落とす
大島さんみたいにドアノブを失敗しないで出て行った前田さんは芯が強い子なんだと思う



(も〜、どうすれってさ)




別に言えるよ
陽菜だって、大島さんのこと…ちゃんと



『ばかみたいにモテるなよ…』



一番悪いのはすきになられちゃうあいつじゃん


なんて大人げないことを考えるのが精一杯だった

先生とあたし 11

−−はまってしまったから


優子side



『…気持ち悪い』



って一言だけ小声で残されるのって一番心にくるよね
まりちゃんが朝あたしを見てかけた言葉
ま、いまのあたしにはダメージ0
だけど


だって、だってさ、昨日は



(小嶋先生に抱きしめられたんだぜ…)



きっといまひどい顔してるんだろうな
あの布団の中を説明しようか?


どうせなら永遠に居続けたかった布団の中はあたしの背後から小嶋先生の腕が回ってお腹あたりをきゅってしてた
小さいあたしを包むようにあたしの頭のてっぺんに小嶋先生のあごがこつんって乗って



『シャンプーなに?』
『TSUBAKIです』
『へーあれいい匂いなんだ』



遠回りにあたしへ伝わったいい匂いという感想
小嶋先生のほうが言葉なんかじゃ伝えきれないほどいい匂いがしてあたしはくらくらしていたとゆうのに


しかも、けっこうぎゅってするから背中に柔らかい感触が…
ああ、神様ありがとう大島優子を産んでくれたお母さんありがとう
生きていることの幸せを知ったのは高校3年生でした



ってな感じで、みんながいけない妄想をしたかも知れないけど(ちなみにあたしもしてました)そんな夢はもちろん見れず、いやらしいことは一切なかったからそこんとこ気をつけるように!



『んふう』
『なに、顔、やばいよ』
『あっちゃん、やっぱり時代は女だね』
『なにそれ』
『固いより柔らかいほうがいい』
『なんか、優子ってわかってたけど変態だよね』



あっちゃん盛大に引いてるなー
あたし友達いなくなるかもなー
まりちゃんにもあっちゃんにもどん引きされたあたしだけど顔を整える気も起きないし
まあいっかって思えちゃうぐらい小嶋先生から抜け出せない



『なんてゆうかさ、わかるかな。匂いと感触の重要性』
『それ以上しゃべらないほうがいんじゃない』
『きっと人間は本能で生きた場合さ、いい匂いと柔らかな感触を嫌う人間はいないんじゃないかな』
『…聞いてる?』
『あたしは特にそうなんだよ。あんなんイチコロに決まってんじゃん。狙ってやってたりして』
『はあ、優子』
『完璧なボディなんだよね。しかもフィットするというか、やっぱり運命だったとしか考えられない』
『なにあったの?』
『あたしと小嶋先生はこうなる運命だったんだ』



(運命って信じる?)
(信じるよ…)



某有名ドラマの真似っこを頭で自問自答しちゃったりしてあたしの頭の中はバカになってた



気づいたらあっちゃんはあたしの相手に疲れ果てたのか教室を出ていってしまった



『ちょっとそこのやばい人』
『んん?まりちゃん』
『かーお。犯罪者だよ』
『あはあっ!だって幸せなんだもん!』
『はいはい良かったね〜ゆっぴーが笑うとだいたいの人は幸せなんだけどね』
『なにー?』
『こっちの話ー』



ほら移動教室だよおチビちゃん
普段ならつっこむはずのまりちゃんの台詞にははーいって素直に返事をしてしまうぐらいに小嶋先生はあたしを虜にしていく


先生とあたし 10

−−火曜日の放課後


陽菜side



『年下ってありですか?』
『なになに?好きな人でもできた?』



陽菜の質問にすごくにやけ顔で答えてくれるのは最初の案内人だった女の先生



『好き、かわかんないですけど』
『気になる的なね?そーだなーあたしは年上派なんだよね』



へーそうなんだ
ぶっちゃけ言えば陽菜だって年上派なんだよね
やっぱり収入とか包容力?とか必要だと思うし



『けどまあ付き合っちゃえば意外といいのかな』



陽菜の質問に自分を重ねちゃった先輩は年下かーなんて呟きながら自分の世界に入ってしまった


だから陽菜も席を立つ
いつも保健室にいるからやっぱり職員室は落ち着かないかも



『んー』



ほんとに聞きたかった質問は女の子ってありですか?



でもほんとのほんとに聞きたかったのは



(生徒ってまずいですか?)



まずいです
って言われて終わりかな



保健室のドアを開ければいるかなって思ったけどまだいないみたいだから帰る準備だけ終わらせておくことにした
最初は仕事が終われば帰ってたのに今では待っちゃうぐらいだもん
陽菜も陽菜だよねー



『わっ!』



ベッドを直そうと思ったらぐーすか寝てる女の子がひとり



『ここにいたか…』



制服しわになっちゃうよ
布団の中にしっかりくるまって、眠かったのかな
パイプイスをずらして腰掛けた
幼い寝顔を眺めて見る



『肌きれい』




まだ高校生だもんなー
うらやましい



『んあ〜こじませんせ?』



ほっぺをつんつんしてたら起きちゃったみたい



『んーあたし待ってた』
『職員室にいたの』
『先生も寝よ』
『えー?寝ないよ』
『じゃー

もぞもぞ布団から出てきて陽菜にしがみつくように膝に座ろうとする
ちょっと危ない…
パイプイスぐらぐらしてるよ




『危ないよ』
『んー』
『寝ぼけてる?』
『いっしょ寝よ』
『もーわかったから』



寝起きは赤ちゃんみたいなんだ
ふにゃって笑って布団に戻る
やっぱりスカートしわになってるよ




『うはっしあわせ』




ってわりにはしっかり距離があって仰向けってよりはむしろ体は半分ぐらい陽菜と逆を向いてるけど




『しあわせ?』
『うん』
『そっか』
『先生』
『んー?』
『今日もかわいい。好き』




仕方ないのかなって思っちゃう


年下だけど5つも
未成年だしまあ犯罪?
女の子だけど生徒だし



でも赤くなった顔を隠すように髪の毛を触ったり動いたりしてる姿をかわいいと思ってしまうから



この胸の高鳴りはきっと、止められないところまできちゃったんだよ




『あっう先生?』
『黙って』
『あい…』




布団の中で2人の距離を詰めたのは陽菜のほうだった

先生とあたし 9

−−下がったり上がったり


優子side



『終わった…』



目が冷めるといつもなら飛び起きてしまいたいほど朝が楽しみなのに今日は体が重くて仕方ない


昨日
あたしの人生は終わった
毎日毎日積み重ねてきた努力も昨日のばかなあたしのせいで水の泡だ



『優子、昨日寝た?』
『んあーあんまり』



小嶋先生の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え
たぶん2時間ぐらいは寝れたかな



『今日は授業寝るかも』
『優子寝たらバレるよ。いつもうるさいから』



あっちゃんの声が子守歌に聞こえてきて頭を撫でてくれるから余計に睡魔に襲われた
ああ…寝れそう


ガラリと音が聞こえたからたぶん先生が入ってきたかも
確か一限目は保健体育だったような



『はい。授業始めます。今日自習ね。先生一応監視役だからみんなちゃんと勉強してね』



クラスのみんなの歓喜の声と
…と?



ガバッ!と顔を上げた先には



(な、んでさ)



保健の先生じゃなくて
保健室の先生がいた



(小嶋先生だっ)



やっぱり今日もかわいい顔があたしに向いて目が合った瞬間に慌ててそらしちゃった



『小嶋先生、だね』
『うん』
『嬉しくないの?』
『うれしい』



そうなんだけど
嬉しいんだけど



ほんとならすぐに飛びつきたい気分だよ
なんでいるの!今日もかわいい!って
でもあたしは動けない
あっちゃんがなにか話してるけどわかんないや



『大島さん』
『へあ!』



いきなりの甘い声にびっくりなんてもんじゃない
すぐ横には小嶋先生がいてあたしは心臓がどくんどくん鳴って飛び出してしまいそうだった



『……』
『ごめんなさい』
『は?』
『いや、あの、』



昨日、あのうるさくしたから、先生具合悪いのにあたし、ごめんなさい



しどろもどろになりながらあたしは精一杯謝った
ちゃんと反省してるんだってわかってもらいたい



『風邪よくなったの』
『え?よかった』



顔を上げるとやっぱり小嶋先生がいた
もう怒ってないかな
でも笑ってもいないや



『ゆうこ?』



あっちゃんの手があたしのほっぺに触れる
心配そうな顔があたしを見ていた



『泣きそう』
『うえ?ぜんぜん!元気元気!』
『うそだよ。めっちゃ涙目じゃん』
『なんだろ!ドライアイかなー』



まずい
まさか涙腺が緩むなんて
ごしごしと目をこすってなんとかごまかした



『小嶋先生』
『ん、え?』
『優子なら大丈夫ですから』
『あ、うん。そっか』



ああ違うよあっちゃん
小嶋先生はなんにも悪くないんだ
あたしが悪いのに



『大島さん』
『はい!』



急に声をかけられて思ったより大きな声が出た



『昨日ごめんね。ちょっと色々あって八つ当たりしちゃって』



申し訳なさそうにあたしを見るからそういうことだったんだってわかった
なんだあたし、嫌われたわけじゃなかったのかも



『うっわあ。いんですよ?先生だっていらいらするときありますよね。あたしでよかったら何回でも八つ当たりして下さい』
『…ん、いや八つ当たりはしない』
『だってあたしだけの特権だし!小嶋先生の素を見れたのはあたしだけだし!』



あたし、いますっごい嬉しいんだよ先生?
昨日は嫌われたと思って全然寝れなかったんだよ
これからどうやって生きていこうとか考えてたんだよ



『お昼休み、昨日の話しの続き聞かせてよ』



やっぱり泣いてもいいかな
悲しいんじゃなくて嬉しくて
今日初めての小嶋先生の笑顔はやっぱりかわいかった

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