−−あれから一週間
優子side
あたしは陸上部に入部しようとしてた。
してたってのは入るのをやめたってこと。
理由は、もちろん帰宅部の陽菜があたしと下校出来ないとわかった途端、明らかに不機嫌になったからだ。
ぷんぷんが収まらない陽菜にあたしは相当焦った。
ものすごいスピードで廊下を走って陸上の顧問の先生を捕まえて
『やっぱりやめます。ごめんなさい!』
そのあたしの走りを見てもったいないとしつこかったけど
『ゆうちゃん帰ろ』
って陽菜に腕をぐいぐいされたからあたしは先生に深く頭を下げてさっさと帰った。
『遅いぞー待ったじゃ…ん』
玄関で待ってたまりちゃんがちょーご機嫌な陽菜を見て固まった
『どしたの陽菜?にこにこだね?』
『ゆうちゃん部活入んないって』
『やめたのゆっぴー?もったいな〜』
『陽菜がすごい顔するから』
まりちゃんはだから陽菜がご機嫌なのねって納得した
『ゆうちゃん帰ったらDVD見よ。昨日怖いの借りたの。ねっ麻里子』
『そうそう。すんごい怖いらしい』
『えーあたし…帰るよ』
『だーめ。逃げないの。家帰ったら着替えてすぐ来てね』
見た目と違って怖い話が平気な美人姉妹に挟まれてあたしは終始笑顔を引きつらせて帰った。
『ゆっぴー見るよ〜』
一度自分の家に帰り制服からラフな部屋着に着替えたあたしはすぐに小嶋家にやってきた
なんせ歩いて5秒だし。
『やっぱ見るの?あたしお笑いのめっちゃうけるやつ持ってきたんだけど』
『え!それ陽菜に貸して〜』
怖いのを見たくないがために持ってきたあたしの秘策!お気に入りのお笑いDVDはなぜか見事に陽菜の手の中に。
あ、あれ…
『ほれゆっぴー毛布あげるから観念しなさい』
怖いのを見るとき必ずあたしは毛布にくるまって見る。
別にそれで怖さがなくなるわけはないけど、どーしても包まれてたいんだよね
『あーあ。寝れなくなる』
『な〜にゆっぴー。お姉ちゃんが抱きしめて寝てやるぞ!』
『麻里子きもい。はい、始まるよ』
き、きもいって…そんな
なんかまりちゃんがショックを受けてたけどDVDが始まるからスルー
(うわ、こっち系…)
怖いの全般むりだけどあたしが最も苦手なやつ。心霊写真とか映像とか。こんなん見てまじでなにが楽しいの?
『わっすごい。こわいね〜』
『うわっ!あんなん写ったらさすがにびっくりだなあ』
対して怖くなさそうにむしろ興味深々だから考えらんない
美人が怖い映像で感動って異様な光景だな
『ゆうちゃんこわい?』
毛布にがっつりくるまったあたしは指の間からそっと見る
その手をおもむろに握られて
『陽菜が繋いでてあげる』
首をかしげながら陽菜があたしの手を握ってきた
『じゃああたしは』
体育座りのあたしの後ろに座ったまりちゃんには足の間に挟まれてお腹に手が回された。
『ゆっぴー、こわくないよ〜!』
まりちゃんに抱きしめてられる態勢に
『あ、なんかありがとう』
とりあえず2人にお礼を言うけど、正直どきどきが収まらない。
まりちゃんは最近ぐっときれいになった。だから前に好きな人でもできた?と聞いたらちょっとびっくりして、そうだねって笑われた
陽菜もまだ幼さは残ってるけどあたしなんかより数倍綺麗だ
まりちゃんと同じ質問は、出来なかった。
そんな美人姉妹に抱きしめられて手を繋がれて
昔は当たり前だったけどさすがにあたし天罰食らわないかな…
ぼーっといまの状況を考えていたらまりちゃんの手が急に動き出した。
『ゆっぴーおっきくなったよね』
『そう?』
別に驚きもしないけどあたしの成長中の胸を触ってくるまりちゃん
『このままいったら童顔巨乳…』
『麻里子まじできもいっ!ゆうちゃん危ないから離れて!ロリコン疑惑あるんだから』
『なっ、ロリコンのなにが悪い!やっぱり幼いほうがかわいいでしょーが!』
あたしを挟んでぎゃーぎゃー言い合う姉妹
まりちゃんロリコン疑惑…
まじか、好きな人って小学低学年とか言わないよね?
『とにかくゆうちゃんはだめっ!』
あたしからまりちゃんをぐいぐい離して今度は陽菜に包み込まれた。
ふわりと陽菜の匂いがあたしの鼻を掠める。
『なんで!独り占めずるいぞ!』
『変態お姉ちゃんはどっか行って』
変態お姉ちゃんという言葉に大袈裟に落ち込むまりちゃんと満足げな陽菜
『あれDVD終わっちゃったよ?』
『あっ!もっかい見よ』
『え〜!?』
あたし帰りたい…