ーー永遠に
優子side
どこかで誰かが笑えば
どこかで誰かが泣いている
でもきっと、人は人を傷つけて成長していくから
『…かわいい』
あたしの胸辺りにある綺麗すぎる寝顔
乱れた髪をそっと直すと、あたしと同じシャンプーの匂いがした
『陽菜』
『すぅ…すぅ…』
静かに名前を呼んでみるけど返事はない
風邪を引いたら困るから布団を肩まで掛けてあげたいんだけど、この美乳が見えなくなるのはいやでどうしようかと迷ってしまう
『んっ…』
『起きた?あれ?』
ん〜、と言いながらあたしの胸に顔を埋めるから目が覚めたかなと思ったけど違うみたい
陽菜の吐息がかかってくすぐったくて、それさえも幸せに感じてしまう
(ほんとに、信じられないな)
いつしか親友という厚い壁を壊すことも、飛び越えることも出来なくなっていた
というより、やっちゃいけないという強い思い
陽菜の幸せを考えたとき延長線上にあたしはもちろんいなかったから
『陽菜、あたしでいいの』
『…すぅ』
『祝福されないかも、陽菜も悪口言われるかも知れない、後悔するかもよ、……子ども作れないよ』
寝ている陽菜に不安をぶつけるのはあたしの弱さなんだけど
『…ばか』
『え?起きてたの?』
『思ってるならなんでちゃんと言わないの?』
眠そうに顔を上げた陽菜の唇は尖っている
『優ちゃんがいま言ってたことぐらい考えてるよ』
『うん』
『…えっちまでしといてそんなこと言い出されたらほんとに体目当てなんじゃないかって思っちゃうじゃん』
『ちっがう!それは!ほんとに違うよ陽菜』
さっきまでの幸せなひとときをそんな風に捉えられたくはない
『あたしは、ただ純粋に陽菜の全部が好きなんだよ?』
『じゃあそれでいいじゃん』
『色々、考え過ぎる癖があるから』
わかってはいるんだけど
人より少し疑い深くてどこか冷めてて現実を見る時がある
『陽菜だってそれなりに考えるけどさ、優ちゃんがいればいいやって思うの』
『…うん』
『ほかのどんな幸せより優子が隣にいるだけでいいの。こんだけ好きなのに伝わらない?』
結局いつもあたしの不安を溶かしてくれるのはあたし自身じゃなくて
『なんか言ってよ』
不機嫌そうに不安そうに泣きそうに
でも、真っ直ぐ目を見て
芯がぶれないのは陽菜のほう
『そばにいるよ。幸せにする。だから、いつまでも隣にいてください』
『…当たり前じゃん』
今度はあたしの胸に強く顔をつけて強くあたしを抱きしめてくれる
嬉しそうに笑った優しい顔が見えてそれだけでもう、さっきまでの不安なんてどうでもよくなるんだ
『ねえ』
『ん?』
『陽菜に全部ぶつけてね』
『うん。ありがとう』
『優ちゃんはもっと甘えていんだからね』
目頭が熱くなるのを感じる
これからずっとこの人のそばにいていいんだ
それだけで反応するあたしの心はまだまだ腐ってなんかいないよね
黙ったあたしに気づいた陽菜があたしの顔を不思議そうに見た
『愛してる』
『……もっと』
『大好き。愛してる。陽菜だけ』
『ん?もーっと』
『ははっ』
こんな可愛すぎる彼女に
言葉を愛を体を心を
あたしの全部を捧げるから
一生隣で笑っていてほしい
これから先、ぶつかる壁は高いだろうけどきっと二人ならやっていける
いくつ歳を重ねても変わらない関係でいたいね
『優ちゃんの家、住みたいな』
『んーそうだね。将来は一軒家でも買っちゃおうか?』
二人が住むのに十分な大きすぎない愛の巣をあたしが陽菜にプレゼントするよ