しばし席を立っていた間に、ツレが見知らぬ女の子と喋っていた。
いや、言い方に語弊があるな。今日は大石から「相談のお礼に」と誘われて一緒にお茶してたんだけど、ちょっとトイレに行ってる間に大石の友達らしい女の子がいたっていう、それだけの話だ。
「あっ、なっちお帰り」
「ああ」
「えっと、俺の幼馴染みで、今は星ヶ丘大学にいる伏見あずさ」
――という名前に、「あっ」と思ったのは言うまでもない。「西海在住で星ヶ丘の映研、中肉中背で茶髪のボブヘアー、赤いフレームのメガネをかけたあずさちゃん」が目の前にいるこの子だと確信出来たからだ。