昨日からの流れで何故かこーたがうちにいる。せっかくだし頭数があるうちに掃除をしようと思って部屋の掃除を手伝わせている。母さんには友達に掃除を手伝わせるなと叱られたけど、こーただから別に問題ない。
元々特別汚いワケでもない部屋だ。布団を干したり、掃除機をかけたり。日頃はなかなか出来ないことをやっているだけ。学習机の引き出しも、随分とメモやなんかで溢れている。あれっ、これはいつのキューシートだ?
「野坂さん、これは何ですか?」
「なにそれ」
「ああーっ!」
「これは、オリジナルのロボットか何かですか?」
大掃除あるあるのひとつ、黒歴史の発掘じゃないか! こーたからその紙を奪ってよーく見てみると、中学とかそれくらいに描いたっぽいロボットの絵。ゲームやりながらそんなことをしていた覚えがあるなあ言われてみれば。
「探せばまだいろいろ出てくるかもしれませんね」
「こーたお前漁るな! 机を!」
「野坂さんの弱味を握る絶好の機会ですからね」
「このドSめ!」
すると、あれよあれよといろんな図面が出てくるのだ。どうして捨てなかった過去の俺! 意味がわからない。目の前に並べられたオリジナルロボットの図面に、いっそ殺してくれと心では正座で涙を流し、顔を手で覆っている。それ
くらいの気分だ。
「でも野坂さん、このロボットたちが戦ったらどれが一番強いんでしょうね」
「はっ」
「この青いのの性能だと、火力は強いですけど対空が弱いじゃないですか。赤いのは、スピードはいいですけど耐久性に問題がありそうですね。欠点を作ってある辺りが考察するにも楽しいですね」
「それだ! きっと今の俺ならより良く図面を作れるはずだ! ダテに授業でCGはやってない!」
母さん見てるか、いくら表面上は礼儀のあるよく出来たこーただろうが男がこうやって集まれば遊びが始まるんだ。パソコンの電源をつけ、今回の目的に適切なソフトを立ち上げる。暇を持て余した大学生の本気を見せてやる!
もちろん、誰に見せるワケでもない。それらが登場するゲーム……は、頑張れば出来るけどすぐに出来るワケではない。それでもこのノリと勢いでやるしかない。今年は毎年見てる年越しのコンサートもやらないし(その件に関しては菜月先輩ともメールでお話しした)、これで年を越す覚悟だ。
「フミー、掃除の調子はどう? ――ってあらっ、始まる前より散らかってない?」
「全てはこーたが悪い」
「何を言いますか野坂さん!」
「お前が黒歴史を発掘した上にどれが1番強いんだなんて話を振るから悪いんだろ!」
「あーらあなたそんなことを言いますか!」
すると、母さんがその辺に放ってあった黒歴史の1枚を拾い上げ、それをまじまじと見ているじゃないか。いや、昔からこのテの物に興味があったとは親だから知ってるとは思うけど改めて見られるとまた心の中でイヤンイヤンしなきゃいけないじゃないか!
「あらフミ、この設計だと重心が上に偏り過ぎて安定歩行もままならないわよ」
「えっ」
「もうちょっと下げるか何かしなさい。あっ、そうだ。知り合いの機械工学の先生に見てもらおうか」
「そこまでしなくていい! 個人的に話は聞きたいけど!」
「……野坂さん、この親にしてこの子ありなんですか?」
「こーた掃除するぞ! また妙な物が出て来たら即ゴミ袋行きだ!」
end.
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ノサママの千佳子さんは科学館勤務のママさんなので、科学的なことにはある程度興味があるよ! この親にしてこの子が出来上がったワケですね。
中学くらいのノサカがいろいろゲームやアニメに感化されてオリジナルのロボットとかを考えてたとしてもおかしくはないなと思い。石川とかでもアリかなとは思ったけど。
結局神崎はいつまで野坂家にお邪魔してるつもりなんですかねえw この感じだと初詣にノサカを連れてくコースも十分にあり得るぞw